79.取材旅行24(タイムスリップ)
広島市内の観光ホテルで一泊した翌朝。
僕たちは取材車を工場で受け取り、早速”猫森村”を目指した。
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「わたしらが一昨日取材した”猫守村”の地域について少し興味がありましてな」
途中の休憩所で食事となった時、猫山さんは手帳を取り出して僕たちに話しだす。
近隣を調べたところで、次のような事が分かったらしい。
-広島県庄原市にある標高815mの霊山・葦嶽山はなんと、”日本ピラミッド”であるという。
-どこからも三角形に見えるその姿は神の山として太古の人々に崇敬されていた事を示すのだと。
それを考えれば、猫山さんのUFO説も頷ける。(60話-取材旅行5(猫山さんは語る2)参照)
僕たちは”猫守村”足る由縁にも一層の信憑性を感じたのだ。
次の機会にはぜひ取材したいですな、と猫山さんは残念そうである。
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猫を守る村に導かれて、僕たちは猫の森に向う。
老猫が僕に刻んだ記憶と共に。
老猫の記憶は高速道路から推し測る事ができなかったために、僕たちは一般道路から道を辿った。
車は一路、広島市から国道54号線を南下し、国道2号線へ向う。
辺りはなだらかな山並みが楽しめる五日市周辺に差し掛かり、県道41号線を辿る。(全ては僕に刻まれたイメージのままに車を進めた)
古き良き赴きを漂わせた湯来周辺で国道488号線を辿る。
やがて空気も美しい吉和周辺で国道186号線に入り、潮原温泉を過ぎた辺りで一旦車を留めた。
(ここからは冠山に向けて登山が始まるからだ。)
車を停車した途端に、キャビンからみんなが降りて走って来る。…なんだか口々に叫んでいる。
話を聞いた僕は驚いた。・・・6時間程度に思えたそのドライブは、とんでもない時間を走り続けていたらしい。
みんなの話を聞くほどに、僕は狐につままれたようだった。
まだ日中だと思っていたが辺りは既に陽が暮れていた。
(というより夜明けが近かったようだ)
「おなかすいた」ツヨシの一言で僕は我に帰る。
明け方。東の夜空に金星が輝く。
金星の下で、僕たちはカップラーメンを食べたのだ。
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タイムスリップのようだな。
みんなの寝静まったキャビンの布団にくるまって僕は思う。
たくさん不思議な経験をしたようにも思うのに、ちっとも不思議な感じがしないのは何故なんだろう。
『眠りなさい』 僕の頭の中でマコさんがささやく。
『タロちゃんは導かれているわ。心配しないで眠るのよ』
あの金星をマコさんは見れるかな?
見れるといいな、と僕は思う。
そうして眠りがやってきたのだ。鷹を連れて。
実在の地名が出てきますが内容は筆者の創作です