76.取材旅行21(編集作業)
冠山から下山した僕たちは、そのまま一泊する事にした。
まずは編集作業である。
なにしろ取材旅行なのだ。
ツヨシがビデオテープをチェックする。
結論から言えば、残念な事に鷹と老猫たちは映ってはいなかった。
僕たちが小屋に入った瞬間から画面にはノイズが走り、砂嵐の後で僕が振り向くだけであった。
今までのシーンと共に、僕がアフレコをする。
シーン毎にBGMを挿入する。
編集作業が終わる。
ぐぅ、と大きな音がする。僕たちはツヨシを見つめる。
「お腹すいた」ツヨシが申し訳なさそうに告白する。
「すいません、私も」タジマが手を上げる。
「わしも!」猫山さんは常にハラペコなのだろう。
編集が終わった取材結果の視聴は食事と共に行う事に決まった。
僕たちは笑いながらキッチンに向う。
下山途中の議論のおかげで、今夜のメニューは既に決まっていた。
山といえば”カレーライス”なのだ。
そして疲れた僕たちにはレトルトカレーでもごちそうである。
お米を猫守村の湧き水で炊き、茄子・エリンギ・ピーマンを炒める。
鶏肉を炒め、ホールトマトを少し追加する。
たくさんのレトルトカレーと共に鍋で煮る。
隠し味はウスターソース。
出来上がったところでみんなが一列に並んでいた。
まるで学校みたい。
「おかわりはありますかな!?」食べ始めた瞬間に猫山さんが叫ぶ。
たくさんあるよと僕は笑う。
人里離れた登山口に僕たちの笑い声が響いていた。