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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
69/123

69.取材旅行14(登山)

 僕たちは広島市と山県郡千代田町との境にたどり着いた。

ここが旧浜田(石州)街道が通じる場所のはずである。

しかし、ここには普通の峠道が普通の道路として整備されていた。

(冬にはスキーで繁盛していたのだろうか、いくつかの看板も見かけた。)


 僕たちの予想を裏切り、辺りは素っ気無いほどに何もなかった。

残念なことに、「猫の七継ぎ松」は大々的に宣伝もされぬまま、自然の一部として埋もれたのかもしれない。


「伝説とはそういうものです」とは猫山さん。

「ここでワンカット収録して、冠山へ登りましょう」

ここからのナビゲートは猫山さんである。


いたずらに観光地化されていないだけ、信憑性があると彼は言った。


---


 カット収録を終えた僕たちは再び移動した。


冠山登山口付近で駐車した後、各自取材の機材を手分けして背負う。


いよいよ本格的である。


辺りはしんと静まり、空気はきりりと澄み渡っていた。


ツヨシがビデオカメラで周囲を収録する。登山道に踏み込んだ猫山さんを背後から追いかける。


 上り始めたところで下山してくる客とすれ違った。


僕たちは挨拶しつつ、山の様子を教えてもらう。


「テレビかいね?」と彼らに聞かれる。

「そうなんです。危険な場所とかありましたか?」

ないない、と笑顔で彼らは口をそろえる。

「ええ天気じゃけえね。なんも危険なんてありゃあせんよ」


それはよかったと僕たちはお礼を言い、先を進んだ。


 分かってはいた事だったが、機材は重かった。

一足ごとにずしりと肩に食い込む。


 バッテリーとレフ版と大型マイクに予備のカメラ一式。それらの取材機材に加えて、通常の登山道具があるのだ。

ロールマット、テント、着替え、食料、飲み物、etc・・・。

そして”煮干”。


お供えが煮干でよかったと僕たちは心底思う。

(”マグロ一匹”の可能性だってあったのだ!)


---


 とにかく前に進もう。



汗だくでひたすら進む道の向こうに、くっきりと晴れ渡った青空が広がっていた。


冠山はまだ、その頂を僕たちに見せてはくれなかった。


挿絵(By みてみん)


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