61.取材旅行6(天才ツヨシと天才タジマ)
収録を終えた僕たちは、取材車に向った。
タジマとツヨシが手際よく作業を始める。
ビデオテープを編集機材にセットし、2台のモニターで確認しつつ編集をしていく。
縦長のラックに行儀よく並んだ機材たちは素人の僕にとって威圧感さえ感じさせる。
収録映像は様々な加工を施されて仕上がって行く。
猫山さんの指摘により、話に登場する逸話の具体的なイメージ映像を入れる事になった。
「でも材料を持ってないんです」サングラスを外した猫山さんはもじもじしながら言う。
「大丈夫」ツヨシはそう言うと、コンピュータを操作した。
「専用の情報サーバーを本社に用意してあるんです。出発前に必要なデータは揃えておいたのですよ」タジマは言う。
何の事だか理解できない僕に、タジマは補足してくれた。
本社のコンピュータとここのコンピュータがやり取りできるのだそうだ。
そのための設備も車に備えていると。
タジマは同じ仕組みを軍用システムに提供した事があると言う。
「できましたよ」ツヨシが再び編集機材を操作し、猫山さんの解説に合わせてカットインして行く。
「さあ、ここにタロさんの言葉とBGMを被せれば出来上がりです。移動中に音源と語りを考えてください」
それに合わせて準備するからとタジマが締めくくった。
彼らは”天才”なのだ。
人類が月にも行けるわけだ。
窓の外には大きな月が浮かんでいた。
くっきりと。密やかに。




