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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
60/123

60.取材旅行5(猫山さんは語る2)

 コメンテーター猫山氏の語る話は、実に興味深い内容であった。


雰囲気を出そうと、我々は取材車から降りて収録を続けた。


 「これから向かう広島県山県郡では、”7年以上飼われたネコは飼い主を殺す”といわれる逸話がありましてな」

辺りの夕焼けと相まって猫山さんのサングラスが輝く。

「まずはその逸話からお話しましょう。何かの足しになるやもしれません」


「それは可部峠の「猫の七継ぎ松」として知られております。

少々長い話になりますが堪忍してください」

そう言うと、猫山さんは手帳を取り出して次の話を始めたのだ。


*****************************

 広島市と山県郡千代田町との境、旧浜田(石州)街道が通じる場所で、峠の先には冠山がそびえております。そんな場所での逸話ですな。


 ある日の朝早くの事です。

 この峠の辻の宿屋から一人の飛脚(今で言う宅配便)が先を急いでおりました。


 峠を下り始めると、七匹の大きな猫が追いかけて来る。

 猫たちの異様な殺気に飛脚はとっさに”松の木”に這い登る。

 追いかけては執拗に手を伸ばすしぐさに気味が悪くなった飛脚は一匹のネコの手を刀で斬り落とし、ネコたちを追い払った。

 昔はネコの正体が計れず恐れの対象にも見られていたのやも知れませんな。


 飛脚は切り落としたネコの手を風呂敷に包み、江戸に行く。

 そしてその帰りの事。


 再び同じ宿屋に泊まった飛脚は言い知れぬ不安にかられる。

 宿そのものが異質な邪気で満たされていた。

 宿屋の主が顔を出さない事も不安を煽る。


 そこで飛脚は主の婆様の部屋を無理やり訪ねた。

 婆様が見せた手は切り落とされて切り口のみであった。


 飛脚が風呂敷から取り出したネコ手が婆様の手の切り口と符号する。

 飛脚は婆様を斬り殺す。


 死んだ婆様の姿は一転して化け猫の姿となる。

 そして飛脚は知る、三年前に婆様は化け猫に食い殺されていた事を。

 飛脚が登った松の木はやがて”七継ぎ松”と呼ばれたと言う」※

 (※ヤマネコ山遊記>猫沢・猫峠・猫島・猫温泉の伝説より参考抜粋)

*****************************



 僕は関心して猫山さんの手帳を覗き込んだ。

・・・ネコが7匹描かれているだけである。

さすがは”超常現象研究会”である。



 「その逸話と関係があるかどうかは定かではないが、不思議な村があるとの噂をよく耳にするので」

サングラスをずらし、睨みあげる猫山さん。

何かが乗り移ってしまったのか。


 「私は中国地方・広島の山深くに”猫のための村”があると聞きました。

 それがどうやら、広島県山県郡にあるようなのです。


 我々の仲間内の情報によれば、この地域では不思議な現象が多発しておったのです。

 未確認飛行物体の目撃情報もあったし、深夜に光り輝く山も噂となりました。

 私は超常現象とネコちゃんの秘密に長年傾倒しておりましたから、非常に興味を持ったわけです。


 数年前、この山と思われる付近で遭難した人がふもとの村で発見されましたが、その人は記憶を失っておったのです。

 保護されたサナトリウムで催眠状態のセラピーを受けたときに彼は驚くべき内容を話したそうです。


 ”その村は-猫守村(ねこもりむら)-と呼ばれていた”

 ”そこでは猫たちが人語を解し、流暢に話し、村の守り神として共に生活をしている”

 ”うにゃ☆※!うごご・・・”

 それが最後の言葉だったらしいですな。それ以来何も語ろうとしないようです」


そうして猫山氏の収録は終わった。


予想もしなかった彼の変貌ぶりに、僕たちはしばらく言葉を失っていた。


辺りはすっかり陽が暮れていた。

鈴虫の鳴き声が僕たちを包む。


頭上には天の川が輝いていた。


挿絵(By みてみん)


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