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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
58/123

58.取材旅行3(サービスエリア)

 タジマの危なげない運転により、僕たちの取材車は快適に旅を続けていた。


やがて高速道路が中国自動車道に入ったところで、大きなサービスエリアに停車した。

一般車両のスペースは避け、大型トレーラー専用のスペースに駐車をする。


僕たちは今夜、ここに宿泊するのだ。(トレーラーハウスの最大の利点である。)


 一流の運転技術を見せたタジマにみんなで労いの言葉をかける。

「なんだか楽しくなってきました!」猫山さんが路上で叫ぶ。まるで別人のようだ。

「猫山さん、なんだか別人のようですね」僕がためらいがちに声をかけると、猫山さんは満面の笑顔で頷く。


「自然がわたしを呼んでいるのですよ。わかりますか、タロさん。わかっていただけますかっ」

こ、こんな人だっけ?


「しばらくの時間、互いに休憩をとりましょう」

タジマの提案にみんなが頷く。(実にタジマが頼もしく思える。)



 サービスエリアはとても広くて、僕は数店舗並んだおみやげ屋さんに足を向ける。

マコさんは「おみやげ」がとても好きなのだそうだ。


いろいろ悩んだけれど、正直なにを選べばいいのか迷った僕はマコさんに電話してみた。



「タロちゃん!」第一声からテンションの高いマコさん。


僕はおみやげについて悩んでいるとマコさんに説明した。


「タロちゃんから始めての"おみやげ"ね。これは迷うわね」

マコさんはお店に何が見えるのかを知りたがる。


僕は電話越しに説明して歩く。

「わさび漬け」と僕が言う。

「他には?」マコさんが言う。わさび漬けは興味ないらしい。


「わらび煮」「パス」まったく興味ないみたい。

「ゆずロマン。お風呂のもと」「・・・」迷ってる。「保留にして」オーケイ。

「わさびふりかけ」「ぱす!」オーケイ。


 そんな感じでウロウロしていた時だった。


「幸一君?」僕の本名を呼ぶ人がいた。


携帯を握ったまま僕は顔を向ける。

「ゲンさん?」



 僕を呼んだのは、帝国運輸のロゴ入りジャンパーを着たゲンさんだった。

帝国運輸の社長・真田陸に養子となって以来、大人になるまで一緒にいたゲンさん。

ケンカっぱやいけど粋でかっこよかったゲンさんだ!


「なにしてんのぉ~幸一くんよぉ」ゲンさんが僕の頭をわしわしとなでる。

「ゲンさんっ。お久しぶりですっ」わしわしされたままで頭を下げる。


僕は電話中だったことを思い出し、慌ててマコさんにかけなおすと伝えた。



 サービスエリアの喫茶コーナーで一服しつつ、僕はゲンさんと再会を懐かしむ。


 「そうだったんか~。幸一くんがDJタロだったのぉ。いやあ、おどろいたよぉ」

驚いたことに、ゲンさんは僕のラジオを欠かさず聞いてくれていたらしい。

どおりで懐かしい感じがしたわけだなぁ。

そういいながらタバコを吹かして煙のワッカを作るゲンさん。なつかしい。

「相変わらず上手にワッカを吹かすね、ゲンさん」

僕がそう言うとくしゃくしゃの笑顔になるゲンさん。僕はこの人が大好きだ。


 今は何をしとるのよ?

ゲンさんに促されて、僕はかいつまんで説明した。

取材旅行に来ている事。

猫守村(ねこもりむら)の事。

今日はここに泊まる事。


ゲンさんは夜改めて訪ねると約束してくれた。


 「幸一君、俺はタロのファンだからよ。困ったときには駆けつけるよ」

そう言うとゲンさんは電話番号を紙に書いて僕にくれたのだ。

僕も同様に電話番号を教える。


僕たちはこぶしを振り上げ、互いにぶつけた。

これが僕たちの合図だったのだ。

”がんばろうぜ”そして、”仲間だぜ”と拳に込めるのだ。


「また後でな」そう言ってゲンさんは、赤い夕日に向ってこぶしを突き上げた。

僕も再びこぶしを突き上げる。


 そうして僕はマコさんのおみやげ探しを再開した。


きりっとした空気が夕日と共にあたりに漂い始めていた。


挿絵(By みてみん)


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