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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第二章
55/123

55.ツヨシ

 確かに、僕は小学生5年生だ。

それは否定しないよ。


僕は他の人たちより優遇されているらしいことも、

考え方や感じ方が異なることも、否定はしない。


問題はね、周りがはなっから色眼鏡で僕を見ることだ。

子供だからわからないと思ってるのがミエミエなんだよな。

10万だか20万だかもらってお守りをした人たちは、ずっと甘やかすか無視するかのどちらかだ。


僕が本当に望んでいたこと。

それは「本物」を知ること。



 叔父貴は怖がられていた。

死んじゃった大叔父さんもだ。

誰もが彼らを恐れていた。そのくせ、彼らに媚びていた。それが僕には気持ち悪かったんだ。


僕が笑うと、みんなは喜ぶけれど、それは嬉しいからじゃないって分かるんだ。

あのなあ、と僕はいいたいんだよ。

叔父貴たちに媚びて、僕を振り返ったときの顔が気持ち悪いんだよ。

面倒なことしないといいなあって、顔に書いてあるんだ。

何かあったら責任問題だって。


たぶん子供にはよけいにわかるんだ。

声にならない声が。言葉にならない言葉が。


---


 僕には両親がいない。大叔父さんと一緒に死んだからだ。

父と母は叔父貴の襲名披露式典に出席して、大叔父さんの後ろ席にいたんだって。

大叔父さんの座席下から爆発は起こり、半径5メートルに座っていた人たちが死んだんだ。

その頃の敵対勢力は全国のヤクザたちだった。

平和を唱え、民間との共存へとシフトし始めた叔父さんたちを、快く思わない団体の仕業であることは明白だったのだ。


 葬式の日、誰も来ない会場で僕はぐじぐじと泣いていた。

大叔父さんの葬式が重なったことで、誰もうちには来れなかったんだ。

陽が傾きかけた頃、僕を抱きしめたのは叔父貴だった。

叔父貴はなんども僕に謝ったよ。

ヤクザの関係者は大叔父さんの葬式に出ないわけにはいかなくて

そうでない人たちはヤクザ関係者と関わりたくなくて、それで誰も来なかったんだって。


叔父貴だけはウソをつかなかったんだ。

「お前は一人だ。でもわたしがいる。わたしは絶対に裏切らない。だから思い切り泣け」

叔父貴はそう言ったんだ。


 やがてタジマが僕の家に現れた。

彼は沈黙の男だった。

そして彼もウソをつかなかった。

ブルースブラザーズを教えてくれたのもタジマだった。

僕たちは親友になった。


---


 今日、僕はタロに会った。


 あいつ、媚びないんだ。

そっけなくしてても、わざと笑顔を見せても、なんかスルーしちゃうんだ。

そのくせ、僕のスタイルを見透かしてる。

(ブルースブラザーズのジェイクを理解してるなんて!)


よけいに僕は殻を作ろうとしたんだ。

無口に、クールに、関係を隔てようとしてたんだよ。

叔父貴の手前、協力的には見せたけれど。


 正直言って、あいつの料理はうまかった。

ネギ系が嫌いな僕に、ちゃんと麻婆豆腐を作ってくれた。

だからよけいに抵抗したんだよ。

がっかりするのは嫌だからね。


だけど、なんでかな。

あいつ、僕をまっすぐに見るんだ。

「本当はどうなんだ」って聞こえてくるような目で。


なんだか調子が狂うんだよな。


今の僕が信じてるのは、動物と叔父貴とタジマだけなんだけどな。


なんであいつのご飯はうまいのかな。


挿絵(By みてみん)


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