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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第二章
52/123

52.猫山さんと小さなギャング1

 マコさんからの電話が鳴ったのは、テレビを見つめたまま戸惑っていたときだった。


「タロちゃん!」

なんだか嬉しげなマコさん。

「あのビデオテープなあに?」


恥ずかしくて頭を抱える僕に、マコさんは問い詰める。


僕はあっさりと自供した。

ビデオテープと今に至るまでの経緯を。

タジマの思わせぶりな口ぶり、高まる期待、そして訪れるたそがれ。


 話すごとに堪えきれず笑い出すマコさん。

いじわるだな。まるでイタズラを見つけたかのように僕をいじるのだ。

どんなビデオだと思ったのよ~。もう、タロちゃんのバカちゃん。

今度一緒に見ようね、とまで約束させられてしまった。


 「それでね。取材旅行の話なんだけどね」諦めて全てを話し、僕はマコさんに相談する。


「行くべきよ」マコさんはきっぱりと言い切る。

「会長さんが後押ししてくれてるのでしょう?タロちゃんのラジオの事もきっと考えてくれるわ」

それに、とマコさんは真剣な口調で続ける。

「タロちゃんがこの前見た夢の啓示はまだ続いているのよ」


マコさんは不思議な女性だ。

彼女こそ、僕にとっての啓示そのものなのだ。と僕は感じる。


---


 翌日、ラジオ局に出勤した僕は局役員の叔父さんから辞令を受ける。

「ペット用品大手の”アニマル・トイズ”さんが長期のスポンサー契約を結んでくれました。N.A.エージェントも後援してくれます。

すごい事です、タロさん。あなたの人柄にみんな集まってくる」

握手を繰り返す叔父さんが本当に嬉しそうで、僕はくすぐったくなる。


うれしいことだと僕も感じていた。

望まれること、それを喜ばれること、暖かく応援されることがとても気持ちよかったのだ。

夢の啓示が関係しているにせよ、そうではなかったにせよ、僕はできることをやってみたいのだ。


 「さて、タロさん」叔父さんが向き直る。

「紹介しましょう。猫山社長とタジマ会長、そして成田強(つよし)君、会長の甥御(おいご)さんですね」


役員室に入ってきた猫山さんは、やっぱりもじもじしていた。

ビデオ・オファーを拝見したことを伝え、握手を交わした。

猫山さんは会えて嬉しいといってくれた。僕もです、と答えるとにっこりと笑ってくれた。


「元気そうだね、タロさん。がはは」続いて入ってくる成田会長は相変わらずである。


会長の後ろから顔を覗かせる人物に僕は首をかしげる。誰かに似ている。


黒服スーツ。黒シルクハット。黒メガネ。ぱりっとアイロンのかかった白シャツ。

・・・わかった、小さなタジマだ!


「紹介がまだでしたな。こいつは甥のツヨシです。小学5年生」

会長はツヨシ君がとても可愛いのだろう、目じりがたれまくっている。

「あまり人付き合いが得意でないんだが、なぜかタジマには懐いておる。タジマもツヨシも”ブルース・ブラザーズ”が好きでな。四六時中こんな調子なんだわ」

なるほど。


よく似合っていると言うと、疑わしそうな目を向けるツヨシ君に僕は言う。

「ジョン・ベルーシはかっこいいよ。ジェイク役は彼のためにあった」


寡黙にうなずくツヨシに僕は握手を求めた。

彼は帽子を取り、丁寧に握手を返した。


「ほう」会長が目を丸くする。

「こいつは滅多に気を許さんのだがなあ。タロさん、あんたはやはり不思議な人だわ」


どこかで”GOD-MUSICエルマー・バーンスタイン”のフレーズが聞こえたような気がした。


挿絵(By みてみん)


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