表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第二章
49/123

49.CMの反響1(オファー)

 タジマがスポンサー”どりんこ”社長から呼び出されたのは、CM放送が開始されて数日後のことだった。


 一時間後、タジマは”どりんこ”本社の応接室にいた。


ソファの向かいには社長と秘書。


「わざわざ御来社いただき、恐縮です」

社長は汗を拭う。


「何か問題がありましたか?」タジマは聞いてみた。


「いや、逆ですっ」興奮して社長は身を乗り出した。

「あれは誰が作ったのか、紹介してくれと、問い合わせが止まらないんです」

困ったような嬉しいような、複雑な表情で社長は言う。


「もちろん、反響はいいんです。とても」


どうやら、いい反応のようだった。

社長は予想しなかった反響に対して戸惑っていたのだ。


「うちの事務局が窓口になります」タジマは言った。

「その上で、”どりんこ”様に繋がる仕事は全て御社を通すようにします。

 自然を奨励する”どりんこ”。そう紹介してかまいませんか?」


社長は何度も頷いた。


---


 わたしはやりかけの仕事をこなしながら、タロさんを待っていた。


 この時の仕事はデータ解析だった。

CMの仕事とは違い、データ解析は地味な作業である。

100万を超えるデータから、要求された事象となる情報を見つける。

エラーポイントを特定し、原因を分析する。

ただの誤入力もあれば、連携タイミングからの不具合もある。

システムそのものの潜在障害もある。

それらは一つずつ確認するしかない。


タロさんが物珍しげにオフィスへ入って来た。

「少し待っててもらえますか」タロさんに席を勧めてデスクに戻る。


特定のエラーレコードを抽出し、障害原因が特定できたところで(いつ、誰が、どの条件で)どうすべきかの対処を客先に相談する。

今回の原因は連携ミスであったことから、一部のデータ修正で対処することとなった。

修正前後のデータをコンペア(アンマッチ部分を特定した結果を確認)した上で納品することとなった。



 大きな瞳でパソコンを眺めるタロさんに、待たせたことを謝った。

しかし、タロさんは見ていても楽しいと言う。

「タジマさんって何でもこなすんですねえ」

「いえいえ、出来る範囲で頑張るだけでして。それに…私に足りないのはタロさんの持つセンスですよ」

そう言われたタロさんはうれしそうに笑顔を見せる。

こういうところがタロさんの魅力だと思う。


 「タロさんにいい知らせです」

わたしは本題に入る。


「先日、スポンサーの社長に呼ばれました」


タロさんが心配そうな表情になったので、良い話であるともう一度伝える。


CMの放送が始まり、予想を超えた反響があったこと。

次回製作も依頼されたこと。

そして、CMを見た企業からあるオファーが舞い込んで来たこと。


「そのオファーの内容、なんだかわかりますか?」


なんだろう、と瞳をキラキラさせてタロさんは辺りを伺う。

オファーを何かのプレゼントだと思っているのかもしれない。

だが、あながち間違いでもないのだ。


 わたしがタロさんに手渡したのは、一本のビデオテープだった。



「えっちビデオ?」瞳をキラキラさせている。


オフィスの中でわたしは笑った。仕事中に笑うのは久しぶりだった。



えっちビデオも付けてあげれば良かったな。


挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ