43.CM製作4
会長とタジマは車で笑い合っていた。僕とマコさんを乗せて。
「緊張しましたでしょ」会長が楽しそうに言う。
「そりゃそうですよ」僕は答える。
「しかし堂々としてましたよ、タロさん」タジマも楽しそうに言う。運転しながら後ろを振り返りつつ。あぶないってば。
やがて会長宅でくつろぐ会長たちに僕は提案する。
「今日も何か作りましょうか?」
待ってましたとみんなが叫ぶ。マコさんまで。
エプロンを借りて、僕は冷蔵庫を開ける。
…確か、前回お邪魔した時にはあまり揃っていなかった食材が、今回は大量にあるではないか。
あきれた僕にタジマは言う。
「タロさんの手料理、会長が気に入っちゃいましてね」
うれしそうにそう言いながら、タジマは自分のエプロン(水玉)を着る。
玉ねぎを刻みながら、タジマは言う。
「ミルグラム実験の話に、タロさんも興味をお持ちでしたね。
実は、わたしたちに協力してくれるブレーンの皆さん、同じ気持ちなんです」
トマトを刻む手を止めて僕は頷く。
「どうせやるならセンスよく。でしたね」
僕がそう言うと、タジマは頷いた。
「やらされている、と思う気持ちはどこにも行き着かないけれど
喜んでほしいとの想いからの行動は心に響くとわたしたちは信じています」
僕たちはナポリタンスパゲティを作り始めた。
(前回同様に溶き卵の中華スープも作ることにする)
オリーブオイルと鷹のつめを熱して、刻んだにんにく・玉ねぎ・ピーマン・ベーコンを炒める。
砂糖と塩コショウ、バターを加える。
コンソメとつぶしたホールトマトを加えて煮込む。
ケチャップとバターを加えてさらに煮込む。
味を調えて、粉チーズで仕上げる。
茹でたてのパスタをあえて出来上がりだ。
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マコさんはすでに酔っ払っていた。
「おなかがすいたのらぉ」
かわいい。
会長とタジマは僕たちを好きなのだと言ってくれた。
「このパスタも好きですがな」
僕たちも会長さんとタジマさんが大好きですと僕は言う。
マコさんもうなずく。(口いっぱいに頬ばったままで)
彼らは照れくさそうにパスタをすすった。
そうして僕たちは本当の親友となれたのだ。