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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第二章
42/123

42.CM製作3

 前回通されたN.A.事務局の「会議室A」は、こじんまりとした(しかし品の良い)会議スペースだったが、今回通されたのは「会議室B」である。


その場所は会議室と呼ぶにはいささか趣が異なっていた。


100席はあるだろうか。品の良いシートは中央の通路を隔てて左右に並び、座る視線の先にはステージと巨大なスクリーンが設置されている。

天井の高さを考えると、2フロア分を使用しているのではないだろうか。

まるで映画館みたいだ。


ステージ上には僕の席が用意されていた。

(その横手にも2席用意されていた


 やがて、会議室へ現れたのはタジマ事務局長とナリタ会長だった。


「久しぶりですなタロさん。がははは」会長は相変わらずである。

「ずいぶん早くに仕上がったようですね」タジマは見るたびに印象が変わるようだ。

ジーンズにTシャツ姿のタジマはラフでありながら肩書きに遜色ないオーラを漂わせている。


なつかしい親友に出会ったような空気感が僕はとてもうれしかった。


タジマの席上にはパソコンが一台とプロジェクターに投影するためのイメージスキャナーが設置されていた。

僕はスケッチブックとCDを渡し、シナリオの内容を説明した。


「驚きました。たった二日でこれを考えたのですか?」

納品したボリュームは決して多くはなかったにも拘わらず、真剣に驚くタジマ。

僕の完成度を一瞬で見極めたのだ。

いったいこの人はどれほどの才能を抱えているのだろうか。


---


 やがて会議室には関係者が続々と人が入って来た。


 一人ずつタジマに紹介され、挨拶を繰り返す。

マコさんも秘書担当として僕に挨拶をしてくれる。かっこいい。(かわいいし)

「あなたがタロさんでしたか」マコさんの上司、アタルさん(秘書室長)は思わせぶりに握手してくれた。マコさん、何か話したのかな?


 集まった人たちは事務局の方たちだけではなかった。

スポンサーの社長さん、CM製作会社の方々など、おそらくCM関係者の全員が揃っているようだった。


ラフ版の提案段階でありながら、既に完成発表会の様相を呈しているようだ。

こ、怖い。


---


 会場(会議室とはもう呼ばない)の照明は次第に暗くなり、スポットライトが僕の席に当てられる。


タジマの紹介を受けて僕は立ち上がり、僕は簡単に説明した。


「原案からは”飲みたい”と感じられなくて、私なりのシナリオを作成しました。選曲も一緒に。まずはご覧ください」


プロジェクターにシナリオが展開され、僕はストーリーを解説する。


-水道水から水を汲んで飲む主婦。(タジマは効果音を挿入してくれる)

-首をかしげ、旅に出る。深い山を歩く。辺りには草のそよぐ音。

-BGMにはアートガーファンクルの(What A) Wonderful World。

(タジマが曲を流してくれた)

-鳥の鳴き声が導く。岩肌からの湧き水が湧き出す音と共に浮かぶ。眼前に広がるオアシス。

-ペットボトルに詰め、家のキッチンに帰り、ごくごくと飲み干す。ため息。

-商品とロゴが浮かぶ。


静かな会場。


失敗しちゃったかな?そう思ったとき、スポンサー社長が立ち上がる。

「これがいい!決まりです!」

それが合図だった。会場に拍手がおこった。


照明を落とした会場からの拍手は潮騒のようだった。


挿絵(By みてみん)


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