4.タクシー
冬の冷たい雨が降っていた。
人気のなくなったその駅はなんだか懐かしい匂いがした。
教えてもらった墓地へはタクシーで向った。
「お、お客さん。ど、ど、どこからいらしゃったですか」
客商売に向いてなさそうな運転手さんは、人懐こい目を僕に向けてきた。
墓地につくまで運転手さんは僕にずっと話しかけてくれていた。
僕がDJの仕事やここに来た経緯を説明したところで、タクシーは墓地へ到着した。
帰りにまた迎えに来てくれると言っていたが、墓地から振り向くとタクシーはそのまま停車していた。
ずっと待っててくれるみたいだ。
お線香とビールを供えて手を合わせる。目を閉じる。
空気が綺麗だった。
遠くでトラックの走る音が聞こえる。
風がそよぐ。
お花の香りがお線香と踊っていた。
空を見上げると、あの運転手さんが覗き込んでいた。
「は、ハッピさんてあなたでしたか」
なんだか驚いてるみたい。
帰りの車中で運転手さんが話してくれた。
マキは身寄りがなかったわけではなく、家出をしていたらしい。
しかもこの人は親父さんだそうだ。
「なぜ僕を知っていたんですか?」
僕は彼に聞いてみた。
マキから連絡があったのは数ヶ月前だそうだ。
東京での暮らしや生活は楽しい事。
クラブで素敵な恋人ができた事。その彼の名前はハッピー…。
なんだよそれ。
幸い誤解はすぐに解けた。(マキの親友が誤解を解いてくれたようだ)
駅に降りるところで親父さんは言った。
「こ、こんなことお願いするのは、しし失礼かな」
親父さんの親戚は地元ラジオ局の役員さんだという。
僕の返事も待たずに親父さんは親戚に連絡を取り始めた。
ラジオ局に到着した僕を待っていたのは、親父さんとよく似た人懐こい目をしたおじさんだった。
「私も聞いてみたいでんですよ。ハッピーさんのDJ」
そんな突然な。