36.マコとの休日2
駅前では既にマコさんが待っていた。
遠くからでも彼女の姿は目立っていた。なんだかキラキラとして見えるのだ。
僕は両手を振って合図しながらマコさんに駆け寄った。
「待った?」
「ううん。ちょうど着いたところ」
彼女が話すたびにいい香りがする。
「いい匂い」僕がそう言うと、彼女は首をかしげた。
「マコさんのにおい。なんでいい匂いなの?」鼻を近づける僕。
「なんにもつけてないよ」そう言いながら、なぜかマコさんは嬉しそうだった。
「さて、マコさん」僕はいい香りのするマコさんに聞いてみた。
「ランチの買出しに行きたい。何が食べたい?」
結局その場では思いつかなくて、スーパーで食材を見つつ考えることになった。
(僕も考えてなかった)
駅から程近いスーパーに二人で歩きながら、僕は空を仰ぐ。
マコさんも見上げる。そして微笑む。
「いい空だねえ」真っ青な空が広がっていた。
僕らは手を繋いだ。
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雲ひとつない青空の下を歩いて僕らはスーパーに入った。
ショッピングカートを押し、棚を一つずつ吟味する。
色鮮やかな野菜が並ぶ。
つやつやしたトマト。青々としたきゅうり。瑞々しいキャベツ。
メニューを決めかねたまま僕らはのんびりと歩いた。
自然と手をつないだ僕らは夫婦に見えたのだろうか、試食コーナーを通りかかるとエプロン姿の店員が声をかける。
「奥さん、ちょっと食べてって。ほら、旦那さんもね」
タコさんウインナーを僕らは食べた。
「うむ、ウインナーうまいですな」会長のマネをする僕にマコさんはくすくすと笑った。
僕はその口調のまま、いくつもの食材を吟味した。
「夏だからこそ、逆に鍋もありじゃのう。ぎゃくに」
「豚ちゃんのしょうが焼きもうまいけぇね」
ふざけすぎて会長からかけ離れてしまったりして。
結局、僕たちはパスタにした。
挽肉は合挽きで。玉ねぎ、セロリ、ホールトマト、鷹のつめ、ケチャップ、にんにく、オリーブオイル、モツァレラチーズ、生クリーム…
スーパーから僕のマンションまで、僕らは手を繋ぎお互いにスーパーの袋を提げて歩いた。
マコさんはとても嬉しそうで、それが僕をくすぐったい気持ちにさせてくれた。
以前はお互いに東京にいたのに、この土地で始めて一緒に歩いている。
その事実がうれしかった。
マコさんの手は暖かかったよ。




