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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章
25/123

25.マコ転職1(2000年.春)

 わたしの仕事はOLだった。

商社とはいいつつも、中間マージン(ロイヤリティ)目当ての流通業者へ横流しの毎日。

FAXを受注し、次の業者へFAXを発送。在庫を調整。伝票操作。

コピー機も担当する。電話応対も。

10時と15時になると上司、同僚、後輩の皆々様にお茶を出す。

(お茶汲みは好き。ほっこりする)

思えば5年勤めたんだね。


 退職の日、みんなに不思議がられた。

どうやって大手業界でも有名な家電量販店”ナリタ”に呼ばれたのか。


父のツテなのだけれど、異色に思われたみたい。


 ラジオ局の叔父から父を通じて話があったのは三ヶ月前の春。

「あ、あのな。マコ。電気のデパート”ナリタ”って、知ってるか」

落ち着いて聞けよと鼻息も荒い父に、あなたが落ち着けよと言いたくなった。


「お、叔父さんからの話なんだけどな。こっちで新規募集をしてるんだと」

父の話をまとめると、地元にその企業が事業展開を始めたそうだ。

なんでもその企業の会長は元ヤクザ屋さんだったそうだが、思い切った方針転換をしたらしい。

危険だった先代までのヤクザ家業が記憶に残り、地元企業からは敬遠されていたのだが

現在の会長とその側近の手腕は鮮やかであったようだ。


---


 のどかな海と山に恵まれた地元住民に都会から土地開発の話が持ち上がったのは半年前。

最初は緩やかな話し合いから展開するはずだったのに、地元住民一帯の想いを無視した開発計画が強引に進みだした。

都会の企業誘致とは名ばかりで一皮剥けば核廃棄施設を中心とした内容に気がついた住民達は大反対した。

自然との共存はただのリップサービスであり、本音は大量の放射能汚染に怯える街へと変革することであった。

”地域活性化促進財団”と称する彼らの狙いは核施設誘致に対する国からの資金投資で儲けることだったのだ。


 地の利を重んじる”ナリタ”会長はその話を無視できなかった。

「この地元を愛する住民の皆さんの気持ち、わたしもよくわかるです」

”地域活性化促進財団”が開催する説明会の会場で、会長はそう言って怒号に沸き返る会場を後にした。


 一週間の後、”地域活性化促進財団”から役所を通じて通達が報じられる。


「当方の都合により、計画は白紙に戻させていただきます」


誰もが”ナリタ”会長の顔を思い浮かべたそうだ。



 そんなことがあり、代替策として”ナリタ”企業の地元展開を望む声が住民一帯から寄せられた。

市長自らも相談に伺い、会長の真摯な想いがみなの知るところとなった。


 さらに驚いたことに、タロちゃんのイベントにも一役買っていた。

イベントの火付け役として”ナリタ”がイベント事務局を開設したのだ。

今回、叔父さんが打診してきた内容は、イベント事務局の社員募集なのだった。


挿絵(By みてみん)



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