121.N.A.新年会
真っ白な雪に街は包まれている。
わたしは転ばないように一歩ずつ慎重に歩いている。
一足歩むごとにギュッギュッと雪が軋む。
息が白くほわっと煙る。
ようやくわたしはたどり着く。
-N.A.-
今日は仕事始めなのだ。
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入り口で傘をたたみ、体に着いた雪を払ったわたしは事務所へ入った。
事務所の受付にはかわいい雪だるまが置かれていた。
「あけましておめでとうございます!」
みんなでお互いに新年の挨拶を投げ合う。
仕事先のクライアントさんにも電話で挨拶をしたり、メールで挨拶をしたり、年賀状を仕分けたり、みんなで午後からのパーティ準備をしたり・・・(ぱーてぃ)
・・・そうなのよ!
今日はめでたい新年会なの♪
なぜこんなにテンションが高いのかって?
そ・れ・は・ね~・・・
今日はゲストにタロちゃんがやってくるのさっ!
タロちゃんはラジオDJの傍ら、タジマ局長たちと取材旅行を共に過ごした。
帰還した後、局長やナリタ会長がタロちゃんに寄せる信頼度はすごいものだったわ。
彼らは会議の度にタロちゃんの必要性を確認しあっていたようだった。
企業を揚げて、タロちゃんの存在がプロジェクトの骨子に関わると言っていたのよ。
(会議の場ではわたし達のような秘書役も同席する)
そんなわけで、今年の新年会にはタロちゃんが重要なブレーンとして呼ばれたらしいわ。
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そしてタロちゃんがやって来た。
「どうも、あけましておめでとうございます。みなさん今年も・・・」
タロちゃんが事務局の一人一人に挨拶を繰り返す。
本当に一人残らず挨拶して周るタロちゃんは呆れるほどに素朴で、でもとってもあったかい。
いい人だね、とみんながわたしに耳打ちする。
会場の準備が揃ったところで、タジマ局長がみんなを集めた。
「昨年はいろんな事がありましたね。皆さんよく仕事を頑張ってくれました。
そして取材旅行で私がいない間も、事務局はキチンと機能してくれました。
ひとえに皆さんのおかげです。
どうか皆さん、今年もよろしくお願いします。
それでは、パーティを始めましょう!」
待ってました!とアタル室長が叫び、それを合図に事務局のみんなが一斉に叫んだ。
「あけましておめでとう!!!」
舞い散るクラッカー、それに合わせるように突然音楽が鳴り響く。
-Dream On-Praise
(会場の片隅でタロちゃんがミキサーを操っていた)
祝福するかのようなキラキラとした音楽が会場を満たす。
わたしたちは互いを抱き合って新年を祝った。
パーティーは始まったのだ。