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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第四章
120/123

120.2001年元旦

 ”2001年宇宙の旅”の映画を見ていた頃、僕たちは2001年を遠い未来の話だと思っていた。



-2001年元旦-


僕達はナリタ会長の小さな屋敷に集まっていた。


「あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします」 僕達はお互いに新年の挨拶を交わす。

「まあ、硬い挨拶はこのへんにして、居間へ上がりましょう」 がはは、と笑った会長は砕けた様子で僕達をいざなう。


会長宅の庭(というか森)には一面の雪景色が広がっており、縁側から眺める僕達の息が白く煙る。


どこかでクワーッと鋭く鳥が鳴いた。


幻想的だな、と僕は思う。

ステキね、とマコさんが僕に寄り添う。


「今年も再びこの景色が見れましたわい。いや、めでたいめでたい」そう言って会長は目を細める。



 居間に集まった僕達はツヨシに一つずつ封筒を渡した。


「お年玉だ!」ツヨシは満面の笑顔を見せた。

(一人ずつに「ありがとう」とお礼を言って頭を下げる)



ツヨシは学校が楽しいと言う。

鍛錬はしているのか、と僕は聞く。

「もちろんです。師匠」 ツヨシは大きく頷く。


「実はな、タロさん」 と会長が言う。


 あれからツヨシは実に前向きにがんばっているらしい。

そんなツヨシの周囲で変化が起こっているという。


ツヨシを苛めていたケンゴを始めとして、多くの友達が護身術を教えて欲しいと、ツヨシのもとに集まって来るという。


ツヨシに負けたその日から、ケンゴ達は苛められる側になったらしい。

苛められてみて初めてケンゴ達は気持ちが分かったという。

そして自責の念も加わり、引きこもってしまったのだ。


自業自得だと学校の友達が口を揃えるなか、ツヨシは引きこもったケンゴ達のもとを訪れてまわった。


わかればいい、とツヨシは彼らに言ったのだ。

ツヨシが許した事は学校のみんなが知るところとなり、彼らをめぐるイジメは沈静化したのだ。


その事がきっかけとなり、近隣から、”イジメを憎む”想いを抱えた子供達がツヨシのもとを訪れるようになったらしい。



「それでな、タロさん」 と会長が僕に手を合わせる。(お願いがあるのだと言う)


---


ツヨシのもとに集まる子供達。

彼らは会合を開く事を望んだ。


そうして”イジメ撲滅の会”が発足した。


集会の場として、ナリタ会長宅にプレハブが建てられた。

(会場には20枚の畳が敷き詰められ、簡単なキッチンと黒板が設置された)


会の方針は「イジメを克服し、傷ついた被害者が前向きに生きていくための助力を惜しまない」事を主として掲げられた。


その第一回の会合を近く実施すると言うのだ。



 「良いことじゃないですか」と僕は微笑む。


「師匠、講師になってください!」とツヨシが僕に頭を下げる。会長も一緒になって。


そういうことなら、と僕は笑顔で胸を張る。


わたし達もぜひ見学したい、と声を揃えたのはタジマと猫山さんである。

(ほんとうにヒマなんだな、と僕は思う)



「それとな、タロさん」 再び会長が口を開く。

「今日のごはんは何にしよう?」


 おせちは飽きちゃうからな、と会長が頭をかいた。



会長の後ろからホワイトボードを掲げるのは猫山さんである。

ボードには大きく”しょうが焼きなど”と書かれている。


それを見てマコさんが大笑いする。



 縁側から望む庭先では、ツヨシの作った雪だるまが笑っていた。


挿絵(By みてみん)


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