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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章
12/123

12.会長とタジマ 4

 中華なべにオリーブオイルをたらし、にんにくと鷹のつめを炒める。

香りが立ち、少し色づいたところで玉ねぎも加える。

深い鍋に沸かしたたっぷりのお湯にパスタが踊る。塩をふりかける。

コンソメとパスタの茹で汁を加えた中華なべに、アルデンテ加減のパスタを入れ軽く炒めたら、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノの完成だ。


 小さい方の鍋では、ゴマ油でソーセージともやしを炒め、がらスープに塩コショウを振り、火を止めたところで溶き卵を流しかけ、軽くかき混ぜる。

溶き卵の中華スープが完成した。


 とりたて新鮮野菜(庭の畑でいくらでも採れるそうだ)の盛り合わせはトマトの赤が鮮やかだ。

オリーブオイルに塩を振って完成。

このサラダはなんとタジマが作ってくれた。



 月明かりが縁側に映えていた。


 「これはいい」

会長が喉をならす。


「タロさんにはハートがありますな」

「私もそう思います」

会長とタジマがとてもおいしそうにパスタを頬張りながら誉めてくれた。

うれしい。


 食事を楽しみながら、彼らは話してくれた。

ラジオでの僕の番組をいつも楽しんでいると。

最初に興味をもったのはタジマであること。

セレクトされる曲に忍ばせた”自然の音”に共感したこと。


 「あまり露骨に重ねたわけでもないのに、気がついたんですか」

僕は聞いてみた。


「ええ。特に好きなのがナットキングコールですね」

とっくにサングラスを外し、スーツも部屋着(水玉柄のスエット)に着替えたタジマが答える。


「ザ・クリスマス・ソング。あれには関心しましたよ。

前半は雨音を重ねて、後半から雪の降り積もる音が聞こえたのには感動しましたね」


驚いた。

「雪の音?誰も気がついた人がいないあの音?

タジマさんは聞こえたんですか?」


僕は本気で尋ねていた。


あの音は音源として手に入らず、雪山に登山までしてやっと集音マイクで採取したのだ。

忍ばせてもノイズだとみんなは勘違いしていたのだ。


「あれはいい効果がありますよね」

タジマが目を細めて微笑む。


「私は上京する前、北日本の豪雪地帯で暮らしていましたから」


一度腰を据えて降り始めたその雪は、いつまでも止むこともなく自身の雪の積もる音だけがしんしんと聞こえるのだと、タジマは言う。

本物の沈黙が辺りを包み込むのだと。



 ひとつお願いしたいことがあると、会長は別れ際に握手の力を強めた。


でも会長とタジマの”お願い”は、また次のお話。


挿絵(By みてみん)


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