118.かちゅ(エレーンの友達)
番組を終えた僕は、夕陽と共に家路についた。
「おっかえりーっ」
マンションの階段を上がり始めたところで、マコさんが声を掛けてきた。
僕の姿を見かけて走って来たらしい。かわいい。
僕はマコさんの手を取って階段を上がる。(仲良しなのだ)
玄関のドアを開けようとカギを取り出していると、部屋の中から何やら聞こえてきた。
僕とマコさんは耳をドアに寄せて様子を伺う。
ナン、ナーン、にゃごりょょょ~♪
かわいいあの歌声である。僕達は思わず顔をほころばせた。
「ただいま!」カギを開けてドアを開く。
はっとした気配と共に歌声が止まる。
部屋のドアの磨りガラス越しにネコちゃんの姿が見えていた。
「タロとマコですよ~」と玄関で僕達は声を掛ける。
おそるおそるドアの影から顔をみせたのは・・・”かちゅ”だった。
『こんちわ!おじゃまチてます!』と言って、”かちゅ”は飛びついて来た。
僕はよしよしと”かちゅ”の頭をなでる。
マコさんが僕の後ろから顔を覗かせると、かちゅが固まる。
「大丈夫だよ。彼女はマコさん。僕の恋人なんだ」 僕が紹介すると初めてかちゅは安心した顔を見せた。
「マコさん。この子は”かちゅ”。エレーンの友達だよ」 僕はマコさんにかちゅを紹介する。
ゴロゴロと喉を鳴らし、マコさんに挨拶のキスをする。
「かわいい!よろしくね”かちゅ”ちゃん」 マコさんが抱き上げるとかちゅは照れくさそうに身をよじった。
僕達がかちゅに夢中になっていると、奥の部屋から強い視線を感じた。
はっとした表情で”かちゅ”は後ろを振り向く。
エレーンが無表情でじっと見つめていた。(焼きもちを焼いているのだ)
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「まったく、みんなでわたしを忘れてるんだもの」 失礼しちゃうわよ、と言ってエレーンが拗ねる。
ごめんごめん、と僕はエレーンを抱きしめる。
・・・誇り高き”奇跡の猫”は大きくあくびをして、しっぽをゆっくりと揺らす。
やがてゴロゴロと喉を鳴らすエレーン。(ご機嫌が直ったようだ)
「さあ、タロちゃん。マコちゃん。改めて紹介するわ、この子が”かちゅ”よ」 と言って、エレーンが胸を張る。
エレーンは自分から紹介したかったのだ。