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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章
11/123

11.会長とタジマ 3

 「森は森のままがいいですな」


和服の胸元から見えていた龍の刺青をさりげなく隠しつつ、会長は子供のような瞳で熱く語る。


「土地は自然のパワーと密接な関係を保っておるです。

昔の人々は大地の”気脈”を常に意識しておったわけですな」


スーツの上からエプロン姿となったタジマから、よく冷えたビールを受け取りながら会長の話は続いた。


「縄文時代の地図で水脈を見ますとな、現在の地図では水に由来する名称を持つ土地が多いことに気がつくでしょうな」


ごくごくと一息にビールを飲み干すと、僕にも飲めと勧めてくれた。


 本来、神社・仏閣のあった場所は大地の気脈に沿って建立されたらしい。

昔の人たちは、自然に逆らってはいなかった。

現代人がそういうことを考えずに、神社・仏閣を好き勝手に移動したりした事は、人間の体の気脈に置き換えて考えれば、そのリスクの大きさが理解できるはずだと、会長は憂いに満ちたまなざしを宙に向けた。


 享保六年に書かれた「民間省要」には、次のような記述が載っていたらしい。

”土地を人の体として見た場合、東海道は国脈であり北陸道は督脈のごとし”

”人身一体の血脈運行するが如く”。

(参考:江戸ものがたり(第七話)※)



 古い日本家屋の縁側から見える風景が、会長の想いを映し出しているように感じた。

耳をすましてみると、実に多様な生物が合奏を奏でていた。



 招待していただいたお礼に、僕は簡単な料理を作らせてもらうことにした。


「近頃は食事もマンネリでな」

会長が寂しそうに言うのだ。


「高い金を払って食事すれば、まあうまいことはうまいがな」


 僕がたまに食事を自炊していることを聞いた会長が、自炊のレパートリーにひどく興味を示したのだ。


 夕焼けが辺りをオレンジ色に染める頃、僕はエプロン姿で土間を上がった奥のキッチンに立っていた。


 木々のざわめきと、鈴虫のハーモニーが今日のBGMだった。


挿絵(By みてみん)



※江戸ものがたり(第七話)(㈱シュプレコーポレーション)記述より一部参考とさせて頂きました。


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