100.ツヨシの家1
僕達が尋ねたのは、会長の屋敷から15分ほど離れた住宅街の一角である。
入り組んだ路地の先、車も入れない小道の突き当たりに、ツヨシは住んでいた。
街灯が灯り始めた小道にツヨシが僕達を待っていた。
僕達を見てツヨシが笑顔になる。
両手を広げて飛び込んで来るツヨシは、やっぱりかわいい子供だった。
「タロさん、猫山さん、汚い家だけど入ってよ」 そう促されて僕達は部屋に通された。
蛍光灯が古いのか、部屋の中はうっすらと暗かった。
ツヨシは部屋に入るとすぐにテレビの電源を点ける。
そして小さくほっとため息をつく。
ツヨシが一人でここに住んでいる事を、僕はタジマに聞いていた。
両親が亡くなってから、タジマや会長の説得にも応じずに、彼は一人で生活をしている。
冷蔵庫には一つの野菜もなく、冷凍食品だけが充実していた。
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これ見てよ、とツヨシが二階の自室に案内する。
そこにはたくさんの機材が並ぶ。
複数のコンピュータ、音響機材、無線機、いくつものモニター画面。
ここは彼のお城のようだ。
「いつもこの部屋で生活してるの?」と僕は聞いてみる。他の部屋は使ってないのかと。
そうだよ、と彼はうつむく。
「タロさん」ツヨシが真剣な顔を向ける。
「この家・・・でるんだよ」
(ごきぶり?と僕は思う)