勇者と科学者
異世界広場では勇者と科学者が論争していた。私は広場の真ん中、勇者と科学者が議論を繰り広げている場所にいた。昨夜寝たときは自宅のベットにいたのに。どうやらこれが異世界転生というやつらしい。勇者と科学者は侃々諤々の話し合いだ。その周りを囲うように聴衆が群がっている。私は注目集まる二人のちょうどあいだに転送されたようだ。なんでこんなところに。私の頭の上につばが飛んでくる。
「とにかく、いかに生きるべきか。それが大切だ。我々はこれからどのように生きていくか。一人ひとりが普段いかに振る舞うべきなのかそれが大切だ。行動するときには道標が必要なものだ。とにかく理想というのをどこまでも追求しなくれはいけない。」
勇者が力強く話す。体には剣と盾を持ち、いかにも勇者という格好だ。勇者臭すぎる勇者である。
「そんなことはどうでもいい。いかにあるかそれが大切だ。いくら理想を議論しても、人生はそう上手くはいかない。それ以前に物事がいかにあるかをじっくりと眺めることが大切だ。大事なのは何よりも真実だ。」
科学者が言う。白衣を着た科学者はいかにも科学者という見た目である。
この二人は何を言い争っているのだろう。そんなことを話し合っても仕方がないのではないか。お互いに相容れる隙間がない。それでも、議論は続く。
「真理なんて、分かったところで行動は変わらない。そんなことを知っても何にもならない。我々の人生に活用するすべはないのだ。明日、自分が死ぬことが分かっても、私の行動は変わらないだろう。
私は自分が死ぬその時まで自分の道を極める事に過ごす。」
「そんなのは理想を追求しても同じですよ。理想で腹は膨れませんから。たしかに真理が授けられても我々の生活は変わらないかもしれない。でも、もっと物事を受け入れられるようになるはずです。身の回りの物事に認識を深めれば上手く活用することできる。」
私は二人の会話を何となく聞いていた。この二人の話し合いはどこに行っても平行線だろう。
「あなたはどう思いますか。」
二人が私に聞いてきた。
私は自分が裁判長であったことを思い出した。




