1-7 出発
出発
出発の行列は、先頭に二頭の馬が米を担いで歩き出した。
その横を、移動するグループの若者が先頭を歩き、ゆっくりと進む。
その後ろには、移住者達が二列、三列と続いた。
首には衣服を詰めた袋をくくりつけ、腰には干し肉や乾燥果物を入れた壺を布で包んで吊るし、それぞれが思い思いの荷を抱えて歩いていく。
中ほどには移動グループの仲間たちが散らばり、移住者の歩みを見守りながら声をかけていた。
最後尾には集落の管理役がつき、遅れる者がいないか確認しながら進む。
総勢五十人ほどの行列である。
春日山の麓から伸びる道を、これほどの人数が列をなして歩く姿は、麓の集落の者たちにとっても初めて見る光景だった。
先頭を歩く移住者たちは、興味津々で移動するグループの若者の背中を見つめていた。
若者は迷いのない足取りで、まっすぐ前を見て進んでいく。
「ねえ、道に迷ったりしないんですか」
一人の移住者が、若者に問いかけた。
「迷わないよ。この道は歩き慣れている。心配はいらない」
若者のあっさりとした返事に、移住者たちはさらに興味を深めたようだった。
歩みが進むにつれ、春の柔らかな風が頬を撫で、胸の中に期待が膨らんでいく。
妙高に着くと短い休息をとり、夕暮れには野尻湖のほとりへたどり着いた。
野尻湖畔では荷物を下ろし、火を焚き、いくつかの輪になって座った。
歩いてきた道のりを振り返り、皆がほっと息をついた。
火の番は交代で行い、夜が更けるとそれぞれ眠りについた。
翌朝、日が昇ると同時に起き出し、草を摘む者、罠を仕掛ける者などが動き始めた。
移動するグループの若者は、彼らが歩くのは専門でない事を理解していた。しかし彼らは、暮らしには貪欲だった。彼らは食事の用意の為に動き出したのである。若者は管理者と耕作労働の住民を、細かく観察することにした。彼は、管理者の動きにも注目していた。特に管理者の振る舞いを気にしていたのである。
日が沈むと再び火を囲み石を置いて石焼きのテーブルが出来上がった。簡単に切り分けられた小動物の肉を岩の上におくとジューッと湯気と同時に肉の焼く香ばしい香りが鼻を突いた。腰の袋から塩を取り出し振りかける。うまそうだ。
彼らは、語らい、そして眠りについた。
そんな日々が続いた。
出発から三日目の夕方、ついに長野盆地へ到着した。
皆は移動するグループに礼を述べ、無事の到着を喜び合った。
四日目の朝、いよいよ新しい生活が始まった。
数人ずつに分かれ、近くの山へ入り木を倒し、地面を掘り、小屋を建てる準備を進めた。
集落の管理役は田んぼに適した場所を示し、土を耕し、水を引くための工夫を始めた。
馬を使って土をならし、最初の田づくりが始まったのである。




