5-2 伊勢の大巫女
伊勢の大巫女
佐久の里の移動するグループの親分になった若は、弓使いのいる小屋に向かっていた。
「チビ婆、弓使いは、おるか?」
婆さんになってるチビは、そう呼ぶ男にムカッとしたが、仕方ないと答えた。
「おや、すぐ戻ると思う。川で魚を獲ってくると言ってた。」
チビに言われ小屋に入り、座っているところに、弓使いが戻ってきた。
帰ると、おうと返事し、魚を捌き、焼かれた石皿の上にのせ、塩をパラパラとまく。木で作った皿に焼かれた切り身をのせ、親分に渡した。
「何のようじゃ、小屋に来るとは」
「巫女とも話したんだが、諏訪湖の先の先に、10日ぐらい行ったところに巫女の大巫女がいるの知ってるか?」
「昔、婆様から」
「話が早い、行ってみんか?」
いいぞ、とあっけなく許可を取ると二人は早々に小屋を出て旅に出るのであった。
チビには、ひと月ぐらい借りると親分が言って、大きく手を振って去って行くことになった。
直江津王国は、春日山の巫女が、大きく政治に関わるようになり、戸隠から離れてしまったようだ。
南の国も敦賀の縄文巫女とのつながりもそこそこだったが、平地の縄文も逃げ出さなくなったらしい。そんな情報を得て、もっと大きな動きを巫女は感じたらしく、伊勢の大巫女に会ってみたいと思ったのである。
諏訪湖を過ぎ、伊那、愛知を抜けて、大海の方に出ると、その先に大きな海の集落があり、その森に大巫女がいるそうである。
弓使いは、知っていた。
諏訪湖半で1泊して、伊那を通り、愛知までに3日かかり、左側に大きな海が見え始めると、更に3日かけて、明日には、大きな集落に着くだろうところで、泊まった。
焚き火にあたりながら、珍しく弓使いから話した。
「移動するグループの若いのがおるのに、我なんか役に立たんぞ」
「婆様の事が分かる奴が必要だ。すまんな手間かけて」
「婆様も、昔には、佐久を手伝えと言われたからな」
明日は、集落を見ながら山奥の小屋を探すらしい。弓使いも方向だけしか知らなかった。
海沿いといっても、少し離れた場所に小屋が立ち並んでいる所を過ぎて大きな川を渡ると森が広がっていた。そこに、佐久の神殿のような、大きな柱を何本も立てた、床付きの大きな祠があった。
森を背にしたその祠の前には、警護の人間が行く人か立っていた。
親分は、弓使いを連れて、警護の人間と話をした。
「大巫女様に献上する麻をお届けのために浅間山の婆様の使いで訪ねました。」
警護の人間は、浅間山?婆様?よく分からないようだったが、弓使いが縄文者だな判断して、言葉を祠の中に知らせに行った。
太陽は、森の真上にあり、光がピカピカとひかり輝いていた。風が海から吹いていた。




