4-30 戸隠の思い
戸隠の思い
一行は、秋の深まる冬間近の道をひたすら歩いていた。
オヤジが先行して巫女が続き、チビの侍女、若、そして弓使いが、付いて行った。
大曲りの川の蛇行の前でやすみ、明日、川を渡って戸隠へ入るといういつもの道であった。チビは、蛇行前は2度目だったが、巫女はかつて、母である先代と行ったことがあった。
「チビは、前も来たのね。風が寒いし、火に近づきなさい」
巫女がチビを庇ってると、弓使いが、小動物狩って、肉にして、捌いていた。平たい石が置かれ、いよいよ焼かれる。ジューっジューっと、石の上に肉が乗せられると白い煙とともに香ばしい香りが漂う。
「弓使いがいると楽だ。」
若が、弓使いを労う。オヤジは笑ってる。巫女とチビは、いまか、いまかと待ち構えていた。
もうすぐ冬だ。風は冷たかったが、皆の顔は、元気であった。
翌朝、川を渡り、昼過ぎには、左回りに山を見ながら、戸隠に着いた。
「戸隠の巫女様、お久しぶりです。いまは、母から代を継いで私が佐久の巫女です。今日はお話があって、来ました。」
突然の来訪だったが、オヤジを含め見たことのある顔が来たので、緊張なく、戸隠の巫女が答えた。
「おう、おのチビが巫女になったか。よう来た。」
何重にも重なる小屋の奥で、戸隠の巫女は、喜んで迎えてくれた。
その日は夕方になり、質素だか、皿の数はそこそこにある夕食が出た。
「まぁ、米のある佐久の里のものには足りてないだろうが食べてくれ」
食事をしながらだったが、直江津王国の宰相が来て、縄文の森へ入り婆様と話し、戸隠を教えてしまった。佐久としては、オヤジを使い、来春に、春日山の巫女を連れてくる。修行をお願いしたいと正直に言った。
戸隠の巫女は、春日山の巫女ならば縄文巫女の血筋、問題はないが、、、と歯切れが悪い。戸隠の巫女が思い切って話を切り出した。
「噴火の後、我らの周りでも騒がしい。と、感じるようになった。その、上手く言えないが、直江津王国は、米作りでも長けておるから、そうじゃのぉ、後ろ盾、というか、そんな風にならんかと考えておった。」
佐久の巫女が切り返した。
「直江津王国を受け入れると、言うのですか?」
「受け入れるという事になるかの?我々も南の国やらが、大きく、幅を利かせてるのが不安なのじゃ」
「オヤジ殿、どのように思いますか?」
「巫女様、あ、佐久の巫女様、あたしは、戸隠の巫女様がおっしゃるなら、直江津王国に取引として、伝えても良いかと」
オヤジは深く考えながら答えた。
「戸隠の巫女様、この話は、今なようにオヤジ殿から、春日山の巫女を迎える時に直江津王国に、話してみたらと思いますが、如何でしょうか」
おお。ありがたい。と、戸隠の巫女は、賛成した。佐久の巫女も、ひとつ進むなと感じていた。
冬になる前とはいえ、冷たい風が外は吹いていたが、小屋の中は暖かく、笑いが出ていた。




