4-29 戸隠の巫女
戸隠の巫女
先代と巫女がオヤジを祈りの部屋に呼んだ。
宰相がいたが、オヤジは巫女に仕えてる風に動いていた。
「巫女様、お呼びという事で参上しました。」
宰相は、直江津王国に来る時のオヤジと比較して、巫女に対する礼が厳しいので、少し戸惑った。
巫女が伝える。
「宰相様からのご希望で来春、春日山の巫女を戸隠にご案内いたせ」
巫女の言葉に先代が頷くと、オヤジも深く頭を下げ、仕方ないなと、気持ちを込めて、
「は、承りました。宰相様、来春直江津王国に行き、春日山の巫女様を戸隠にご案内します。よろしくお願いします」
宰相は、早々の決断に戸惑いつつ、よしと思い、頭を下げた。
これで宰相の訪問は片が付いた。
宰相は、皆を引き連れ、帰って行った。
無事に争いもなく、収まったので、巫女をはじめ、先代や長もほっとした。何と言っても直江津王国に対峙したのだ。力が抜けた。
オヤジがキッパリと言う。
「先代様は、この動きをどう思われますか?オレは、宰相が縄文の力に気づき、動き出したと見ますが」
オヤジの言葉に先代が続ける。
「そうよのぉ、婆様と話す必要があるし、巫女はどう思う?」
「私は、春日山の巫女様が、縄文の力に目覚めるのは悪いことではないと感じてるし、直江津王国に縄文の力を認めるのは良いと思います」
「良いことではあるがのぉ、どうしたものか、」
先代とオヤジは、考え込んだ。
巫女がそれを見て、考えを促す。
「婆様と戸隠に事前に話すのが先ですよ」
皆は、そうだなと言う雰囲気になり、形を改めた。
巫女が続ける。
「オヤジ殿、婆様の所へ一緒に行ってください」
オヤジは、切り返しの速さに感心して、はっと頭を下げ、立ち上がるのであった。
「噴火から数年、洪水も起きた。世の中は、騒がしくなってる。あの政治屋のオヤジに、戸隠を出してしまったが、戸隠に行っても上手くいくとは思えんぞ、やり方次第では、佐久の里にも難儀が振り被るかもな」
オヤジと巫女が浅間山を訪ねると婆様がいきなり言ってきた。
「難儀とは?」
オヤジが聞いた。
「難儀は、難儀だ。何が起きるかはワシにも分からん。」
巫女が冷静になって答える
「そうですね。やはり私も先に戸隠を訪ねたいです。オヤジ殿、如何でしょうか?」
婆様が、笑いながら促す。
「オヤジよ、巫女様の方が、読めてるかもな、戸隠にも、戸隠の考えがあろうぞ」
なるほどと思って、オヤジは決意を新たにするのであった。
浅間山は、落ち着いていた。噴煙が、夕日に照らされ、輝いていた。




