4-26 宰相の登場
宰相の登場
秋が来た。
収穫も終わり、麻や乾燥した稲穂を広場で年寄りが集まり、小さな子を集め、作業をしていた。
冬に向けての作業だった。
籾は殻をつけたまま保存していて、大人は、女は田畑の整備。男は狩りで平野や浅間山の縄文の森へ向かっていた。冬の準備だ。
そこに、直江津王国の宰相から自身が集落を視察したいと言ってきていた。
彼は、佐久の集落は、遠い田舎の集落で50人足らずの小さなものと思っていた。
巫女は、長と先代を集めて話し合いを持った。
「やはり来るんだな。」
長は、上司的な宰相を苦手としていた。自分たちが勝手にやってることに罪悪感を持っていた。
巫女が発言する。
「いや、私が相対しましょう。私の護衛には、若と弓使いに頼むことにします。如何でしょうか」
先代が答える。
「そうですね。巫女は経験して指導者としての巫女の力を示しました。そろそろ、外交にも巫女に任せても良いのではないでしょうか」
「先代がそう言うなら、任せたいが大丈夫か。」
「はい、お父様、いや、長、私が対応いたします。」
巫女はしっかりと先を見据え、応えた。
まもなく、直江津王国の宰相が部下を10人以上連れてやってきた。
ここまで、彼らの足で6日の旅程だった。
広場では、年寄りがいつもの通り、麻や稲穂を使い作業しながら子どもたちを見ていた。随分と多いなと、宰相は驚いていた。
左下には刈り取られた田んぼが広がり、小屋も100個ほどあった。
馬を引き連れ、荷物を載せた一行が、広場に到着した。
皆は、初めての土地に、広がる大地。噴煙上がる浅間山に対して、圧倒されていた。
宰相のすぐ横の男が大きな声で叫んだ。
「頼もう、直江津王国の宰相様の一行である佐久の集落へ視察に参った」
中から神殿の扉を開き、若い侍女が応えた。
「よくぞおいでなさいました。」
宰相と2人の侍従が、神殿の中に入っていった。
神殿の祭った壁の方に、まず、宰相を通し、後から巫女が若と弓使いを引き連れ登場した。
まず巫女が話し始める。
「宰相様、はるばる遠いところから、お越しになられました。歓迎いたします。」
宰相に挨拶を済まし、巫女が皆を促した。すると、侍女たちが膳を運んできた。
4本の足のついた四角い膳に、米粥と川魚の開きを焼いたもの、塩漬けした茎等が乗っていた。
巫女の前にも同じ物が1台置かれた。
巫女が、動きを見て告げる。
「宰相様、大したものはないのですが、これがいま私どもが出来る精一杯のものです。よろしければお召し上がりください」
巫女は先に手を付けて、口にいれると、宰相達を促すのであった。
宰相は、巫女を睨みつけた。
幼い巫女の姿、その後ろの若と弓使い。
彼らは春日山の巫女を救ってくれたものであった。
何かを言わなければと、しばらく考え、まず、手を付け、話を始めた。
巫女は口につけてくれたことにホッとしていた。宰相が話し始めた。
「巫女よ、以前の春日山の巫女に対する動きに感謝する。王も、すっかり感心し、移動するグループを含め感謝しておったよ。佐久の集落は、たいそう人数が増えておるな、米の援助は要らぬか?」
宰相は、ストレートに聞いてきた。
巫女は軽く笑いながら、答える。
「何をおっしゃるのですか?私共は元々、直江津王国から来たもの。今さら援助が欲しいなどとは、こちらからは申し上げられません。大丈夫です」
「佐久の集落は、かなりの人数になってるが、、、」
「我らは浅間山の縄文の知恵を借りて生きております。住民は多少、増えましたが、縄文の知識により、大きく発展しております」
「その弓使いは、縄文のものだな」
弓使いが睨み返すが言葉に出ない。巫女が引き継ぎ、応える。
「宰相様、我々は彼らの知恵と米の生産で密かではありますが、何とかやっております。遠い直江津王国の支援はご遠慮いたします。」
宰相は、言葉が出ず、ただ静かに食べていた。
巫女は、まずは成功として、彼女も言葉はなく静かに食べた。




