4-16 春が来た
春が来た
日常が戻った。日々の食事、日々の祈り、日々の安息、繰り返しの毎日。
巫女は、季節の流れの中で、日々を過ごしていた。
昨年の秋に起きた、南の国の変動から冬が来て、春を迎えていた。
春、雪が解けたので、巫女は、浅間山の婆様の所へ向かった。
婆様は、直ぐに質問した。
「佐久の里はどうしてる」
「はい、春が来て、田起こしが始まり、苗どこを作り、芽が伸びるのを待っています」
「いつもの動きに、安堵するの」
「婆様は、佐久の里の動きを心配なさってるのですか?」
当たり前の質問に浅間山の婆様に対して疑問が生まれた。
「佐久には、人がおらんかったが、いまは、里が出来た、気にするのは当たり前じゃろ」
巫女は気づきの深さに驚いて、気がついた。
「あの、浅間山はかわりませんか?」
「ほほー、そこに早気づく、巫女は賢いの。そうじゃ、弓使いが外に居るはず、チビに薬草を取らせてこい」
婆様が侍女に言った。侍女は、巫女を伺い、顔を向けた。
「チビや、婆様の言うとおりに」
侍女が、頭を下げ、小屋から出て行った。
「巫女よ、浅間山は、噴火の後は、落ち着いてる。変化は徐々なのだ、何が変わってきてるかは、いまは、まだ分からん。気を張り、ゆっくりと感じるしかない。」
「変わるんですか?」
「毎日は動かない、日々はいつもと同じにしか見えない、だが確実に変化する。」
婆様の言葉に日々が変わらぬと思っていた自分の浅はかさに、驚きとその深さを感じた。
「婆様、ありがとうございます」
婆様は、こいつは先代より感が良いなと感じていた。葉っぱを色々混ぜ、煎じたお茶を巫女の前に出した。一口飲んで巫女が言う。
「美味しい。」
静かに小屋の時間が過ぎていた。
小屋を出た侍女は、見張りをしていた若に尋ねる。
「あの、弓使いさんは、わかります?」
すると笑って若が答える
「あそこに居るぞ。」
弓使いを見つける。
外では雪が解けて、バラバラになっていた木くずを集めていた弓使いに侍女が声をかけた。
「昨年は、色々ありがとうございました。婆様が、薬草を取ってこいと仰って、、、」
弓使いは、集めた木くずを一つにまとめ、身体の埃を祓い立ち上がった。
「では、叱られたくないから、早速行くか」
侍女は、はいと、何となく嬉しく思い、付いて行く。
山の奥はまだ雪が被っているところがあったが、寒くなく、よく見ると雪の間に青い芽が出ている草があった。弓使いが侍女を促す。
「ここらにある草は薬草になる」
草は所々そのままにし、適当に摘んでまとめるのだった。
弓使いの誘いに寄って、薬草を取って、歩いて、侍女は、ここは何処?っと、辺りを見渡した。山の奥に入って来たのだ。
「今年は雪が浅かったな」
弓使いの声に気がついたように侍女が質問する。
「ここは何処ですか?帰れますか?」
「は、は、は、俺が山で迷うはずないよ。大丈夫。」
そろそろ帰ろうというと、ズンズンと山を降りていった。侍女も慌てて付いて行くのであった。




