4-5 南の国の戦略
南の国の戦略
「巫女とは、なんなのだ?」
「巫女は王権の背景ではないかと思います」
「そんなものが何の役に立つのだ」
南の国では、大陸の序列で支配の構造ができており、国王、宰相、戦略担当等が、直江津王国への戦力に向けて話合いが進んでいた。
大陸では、巫女は、占い師としての存在しかなかった。
占い師ごときが、王権の背景という事が理解できなかった。
直江津王国の巫女は、神殿から離れ、山に入った所にいた。それに力がある事が理解できない。
「では、巫女を排除すれば良いのでは?」
「おお、そうだな。山に入れば排除も楽かもしれない。巫女が排除できれば、国王との話し合いもできるかも知れない」
「柏崎に集落があり、かつて直江津王国の王になれなかった集落だそうです。その集落を利用して直江津王国との話し合いを進めるのはいかが」
戦略担当の高官は、王や宰相に進言する。王が付け加える。
「直江津王国との繋がりを利用するのは、良いアイデアだぞ」
戦略担当の者が、柏崎に向かった。
「殿、チャンスです。南の国から、直江津王国への橋渡しをお願いしたいと言ってきました」
「何、直江津王国に南の国の戦略を伝えて、恩を得るのではないのか」
「何を南の国の戦略など我らには分かってないですか?これはチャンスです。南の国は遠いです。結果的に直江津王国の指揮権を奪えば良いのです」
「何、、、指揮権を奪うとはどうするのだ」
「はい、話し合いの仲介で、南の国に近づき、話し合いの主導権を取り、南の国に支配に屈すると伝え、直江津王国の実権を取るんです」
「そんな事ができるのか?」
「直江津王国は、南の国の実力を知りません。南の国には、こちらが王になる権利があるので、直江津王国を南の国の指揮下に入れると伝えるんです」
「ほう、上手くいきそうだな」
南の国の戦略担当の者は、直江津王国の巫女を密かに抑え、柏崎に話し合いの仲介をさせ、結果的に巫女の排除で直江津王国を乗っ取る算段だった。
秋になろうとしていた。暑かった夏の日差しが、優しく指して、風が吹いてくるのがわがった。
空を見上げると、皿のように平らな雲が重なってる。
「婆様が呼んでる」
咄嗟に佐久の巫女が、山へ向かって歩き出した。チビの侍女が付き従うように歩き始めると、若が気が付き追いかける。
「何処に行くんだ、婆様の何処か?」
巫女は、モクモクと歩き、声を出さない。チビが懸命に付いていった。
婆様の小屋に着くと、婆様が応えた。
「待っておったぞ、よく気がついたな、重ね雲が出たな。そうだなぁ、湧泉の洞窟が良いだろう。弓使い、巫女を案内してくれ」
「湧泉の洞窟?あそこには熊がいるぞ」
「だから、お前に頼んでるんじゃ、手伝ってやれ」
仕方がない。そんな感じで、弓使いが動き出した。侍女も若も付き添った。
山に入り、獣道のような道にはいると、目の前に伸びた枝を木の棒でガサガサと掻き分け、弓使いが進む。
穴の前で、辺りを見渡し、弓使いが
「ここが湧泉の洞窟だ。侍女は入って良いぞ」
若は、仕方がないので、見張りとして残ることになり、洞窟の前に座る弓使いと辺りを見渡した。
「熊が出るのか?」
「そうだ。出たら、遠くにいる内に、バサバサとやれ」
木の棒を持ち上げ、みぎや左に振り抜いた。
穴は、入ると、真っ暗だった。巫女は、乾いた草を束ねて、差し出すと、侍女がカチカチと火をつけた。辺りがボォッと明るくなる。
「この先に湧泉があるのね。」
暫く歩くと岩の壁からボタボタと湧泉が落ちていて、下が皿のようになっていた。
すると風が吹き付け、火が消えた。
真っ暗な闇が微かに光が差してる、何とか湧水の皿が見えた。
岩の周りのヒカリゴケが反応していた。
巫女は、黙って湧水の皿を見つめてる




