4-3 世界の広がり
世界の広がり
佐久の集落は、地震の後も順調に進んでいた。苗は青々と茂り、浅間山から吹く風に揺れていた。
佐久の集落の移動するグループのオヤジは、何処にいたのだろうか?
柏崎や長岡の動きを確認したあと、自分の生まれた故郷とも呼べる場所にいた。
頸城川の支流、保倉川の左岸にある小屋であった。
そこは、かつては、山奥で暮らしていた縄文部落から逃れてきた者たちが、移住してきた場所であり、ウラジオストークより北側のの大陸から漂流してきたものの子孫か、そこに、そのまま住んでいた。
そこは、春から夏にかけて、漁で暮らすような場所であったが、食べ物が豊かで、暮らすのが楽な場所でもあった。
移動するグループは、この時も、まだ幾つかあったが、南を渡り歩いているグループとの待ち合わせで、ここに来ていた。
「佐久の巫女様の様子はどうだ。」
「巫女様は、新しい巫女が継いでいる。浅間山の婆様の助けで、安定しておるよ」
「ほう、戸隠の巫女様の所に行ったと聞いていたが」
「ほう、それはひとつ前の巫女様の時じゃ。それも、浅間山の婆様からの進言じゃった」
「そうか、それにしても直江津王国の力が凄いの、この間、南の国に行った時、色々聞かれての、米の事などを話してたら、直江津王国の米は取れる量が違うらしい。」
「どうしてそんな事を分かるんかいの」
「直江津王国の人間が、話したらしい。南の国から、密かに手が入ってるらしいぞ」
「ほう、そうかい」
佐久の集落の移動するグループのオヤジは、自分たちがしている事は黙って、大きく頷くのである。
「では、また、話があったら、また来てくれ」
佐久の集落の移動するグループのオヤジは、戸隠、川前の集落に寄って、佐久の集落へ戻って行った。
佐久の集落では、巫女が神殿の中で火を焚き、祈りを捧げていた。
侍女達が、囲んで、足を押し付け、ドンドンと叩きながら、舞っていた。
浅間山の婆様から見るのじゃと諭され、移動するグループが、それを可視化していた。オヤジが新しい巫女たちの祈りの場を訪ねた。
「巫女さま、就任、おめでとうございます。息子から長岡の事を聞いたので、挨拶もせず、急いで走りました。先代様のご指示で、至る所に作った情報の窓口は、しっかり動いております。」
長が、先代を連れて入ってきた。
「オヤジ、ご苦労だった。」
「はあ、戻りました。」
「婆様のお話に、長岡の水害の余波が気になっていました。いかがでしたか?」
先代が聞いた。オヤジが畏まって、話し始める。
「長岡の被害は、主に米に限定していたようです。それも、直江津王国により支援が動きました。
それと、別の移動するグループからの情報で、直江津王国の米作は、作られる量がよそに比べて多いそうです。南の国が、しっかり見ていました。」
「さすがだな。」
長が、大きく頷いた。すると先代が、険しい顔でオヤジに聞いた。
「南の国は、王様に声をかけているのでしょうか?」
「様子見のようです。今、いろいろと調べているようです」
南の国が動いてくると、周りが大きく動く。そんな、危機感を感じていた。
「いまは、大丈夫でしょう。直江津は、それだけ大きいです」
「国と国が争うのでしょうか?」
先代の巫女が、また聞く。それにオヤジが答える。
「我らの世界では争いはなかった。だがいまは、新たな弥生集落が増え、縄文の暮らしは影を潜めた」
「父が、以前申したましたが、王族の方々は、海の向こうから来られた方々で、そこの争いから逃れて来られたそうです。」
「なるほど、しっかり見届けないと行けない」
先代が、小さく吐き出すように言った。
外の夕日が赤く輝いていた。




