2-8 先の集落の奉納
先の集落の奉納
新たな領地は、冬を越して、2年目の秋になり、初めて米の奉納を行うことが決まった。
移動するグループの検分役は、新たな領地の報告をすでに昨年中に、王にしていた。
その報告は、まず、この新たな領地の移住は成功し、開発も順当に進んだこと。
しかし、近くに住んでいた縄文が、自身の暮らしを手放さないので、当分、共生していくことを話したのであった。
さらに、移住後の奉納は、今回は延期させてもらいたいことを願い出た。
王は、縄文が今後、集落に吸収されることを予測し、その準備は、怠らないようにと指示を出した。
また、川を丸木船で渡ることを許可していた。その後は、馬で籾を運ぶ。王は検分役の判断に頷き、今度の秋の奉納を許すことにした。
そして、相談の末、名前は川前の集落のより下った場所にあるという事で、《先の集落》となった。
秋になった。爽やかな風の吹く中、刈り取りが始まった。
縄文のオヤジとともに検分役も狩りに参加していた。狩られた苗は、干されることになった。オヤジは、検分役に聞いた。
「検分役よ、お主は、移動するグループからは、離れたのか?」
「オヤジ、おれは、移動するグループの仲間とともに検分役のグループとして、直江津王国の為に動いているのだ。仲間は変わらない」
「そうか、長く同じ暮らしをしていれば、それで良いと感じていたが、変わるものだな」
冬の蓄えの米を融通してもらい、縄文のオヤジの暮らしにも変化があったようだ。
そして乾燥した苗から籾を叩いて落とす作業が始まった。
検分役は、移動するグループの仲間とともに出来上がった丸木舟を川の下まで引いて行き、川に乗せた。
長は、初めての奉納に緊張しているようだ。若者達に、丁寧に扱うよう指示している。
縄文のオヤジも静かに見守っていた。
籾は、木の皮で底を編んでその周りを苗の柄で編んだ籠を作り、入れた。それをいくつも作って、集落の若者が順に担ぎ上げ、川下まで運び、丸木舟に乗せた。
移動するグループの仲間が船をゆっくり、動かし、川を渡ると、そこに馬を待たせておいて、籾の籠を乗せ、縄で縛りつけた。
「では、行ってくるぞ」
検分役は、監視役の長や集落の若者たちに声をかけて進んでいった。
秋の空は高く、太陽は真上に輝いていた。




