2-7 縄文とともに
縄文とともに
移住してきた者どもが田んぼの造成に汗を流しているころ、
検分役として動く移動グループの若者は、近くの縄文のムラを訪ねていた。
湧水の流れる水場を横目に見ながら、
「これも水利に使えるかもしれないな」と思いつつ、
彼はそのまま丘を登っていく。
段丘の上には、縄文のムラをまとめるオヤジの小屋があった。
「おう、オヤジ、来たぞ」
「分かってる。見えてたからな」
「前に来たときに話した通りだ。よろしく頼むよ」
「分かっとる。ムラの者にも話しておいたわい」
オヤジは、当然のことだと言わんばかりにうなずいた。
「それにしても直江津王国ってのは大したもんだな。
王族が新しい集落を作ったと聞いておったが、、、あれ、川前の集落か。
あれも冬の前に出来たんだろう」
「オヤジ、知ってたのか?」
「そりゃ近くの出来事だ。目立つからな」
「実は、あれも俺が引き連れて作ったんだぜ」
「ほう、そうかい。何代も前からお前らと付き合ってきたが、
こんなふうに集落を生み出すとはなかなかのもんだ」
「いや、偶然だよ。あいつらの米は安定した暮らしを生む。
だから人があふれるんだ」
「米ってのは、そんなにすごいのか」
オヤジは新しい作物の話に興味を示したが、
まだその実態はよく分かっていないようだった。
「この辺りの森や川は、俺たちがよく知ってる」
「分かってる。頼りにしてるよ。
移住者たちはまだ若い。猟や漁は、お前らに教えてほしい」
話を終えると、検分役は開拓が進む新たな集落へ戻った。
だが、しばらくはこの地に留まることにした。
縄文のムラとの交流がどう進むのか、気になったからだ。
小動物の罠や狩りには、縄文の若者たちも積極的に参加した。
彼らもまた、新しい住民に興味を持っていたのだろう。
集落では水利が完成し、田んぼが耕され、苗が植えられ、
小屋も建ち、暮らしが形になり始めていた。
夏になると、稲は緑の草原のように風に揺れた。
縄文のオヤジが検分役に尋ねた。
「この草みたいなものが、食べ物になるんか」
「そうだよ。これが米ってやつさ。
秋風が吹いたら刈り取るんだ。手伝ってくれるか?」
「ああ、お前らは害がないし、米にも興味がある。
若い者どもも楽しみにしておるよ」
秋が来て収穫が始まると、
縄文のムラの者たちも加わり、
こうして両者の“共用”が静かに始まっていった。




