2-6 新たな移住の開始
新たな移住の開始
国王が前に出ると大きな拍手が起きた。
直江津王国の神殿前の広場には100人の移住者が、整列して拍手をしていた。
皆は、王を見上げて、新たな土地への期待で胸を膨らませていた。
宰相が一歩前に出て、声を張る。
「王のお言葉を伝える。これから様々な苦難が待っていようとも、皆の働きに期待している」
こうして移住が始まった。
管理者10名も同行し、一行は妙高を経て野尻湖で二泊し、千曲川を目指した。
旅は順調で、やがて川前の集落よりさらに下流の地点に到着した。
手前には林が広がり、その奥で千曲川が悠々と流れている。
検分役が川辺の太い木を見つけて声を上げた。
「おお、ここだ。ここだ」
木の幹の目の高さに、以前つけた切り込みが残っていた。
検分役はその周りに皆を集めた。
移住者の一人が川を見て不安げに言う。
「この川を渡るのですか。広い、、、
検分役、本当に大丈夫なのですか」
検分役は胸を張って答えた。
「川幅は広いが、頸城川の河口のように深くはない。ここは上流で浅瀬がある。歩いて渡れる場所を知っている。我れも何度も渡った。心配はいらぬ」
その堂々とした声に、皆は顔を見合わせて安堵した。
長に指名された最年長の管理者も頷く。
「分かりました。ご指示に従います。よろしくお願いします」
検分役が手を挙げて前に進むと、百人の移住者が固まってついていった。
先頭は長が務め、その後ろに二列、三列と続く。
足元は滑りやすく、膝下まで水に浸かる。
倒れそうになる者がいれば、隣の者が手を差し伸べ、互いに支え合いながら進んだ。
やがて全員が渡り切った。
岸に上がると、皆は息をつき、安堵の笑いが広がった。
川を渡った先の小高い丘に登ると、広い平地が広がっていた。
川から吹く風が背中を押すように流れていく。
遠くに小さな集落が見えた。
「検分役殿、あれは縄文の集落ですか」
「そうだ。彼らには事前に我らが来ることを伝えてある。気の良い者たちだ。気にせず進め」
「承知しました。管理者は川から水を引く手順を確認し、田んぼの位置も決めてくれ。他の者は小屋づくりだ」
管理者たちが動き出し、続いて移住者たちも散っていった。
こうして、新たな弥生集落が動き始めた。




