2-5 新たな領地
新たな領地
移住から年が明けたころ、検分役が川前の集落を訪れ、さらなる移住の話を持ってきた。
しかし川前の集落の長は、縄文集落の吸収が進み、ようやく落ち着き始めたところだとして、移住の一時停止を求めた。
「平地なら、まだまだある」
検分役はそう言って理解を示し、別の場所を探すことにした。
さて、どうするか。
川向こうの下流に、以前見つけた良い平地があった。
検分役はまずその場所を確認し、その足で直江津王国へ向かった。
直江津王国・王の執務室
挨拶を済ませると、検分役が切り出した。
「王よ。川前の集落は落ち着き始めております。いまは移住を止めたい、との長からの伝言です」
「そうか、、、困ったな。昨日も管理職どもが『次の移住はいつだ』と騒いでおった」
「管理職の皆は、何を期待しているのでしょう」
王は歯切れ悪く答えた。
「大きな動きが欲しいのだろう。新しい土地も見てみたいと、、、だから貴様が戻ったら聞いてみろと」
検分役は静かにうなずいた。
「王よ、ご安心を。移住は続けます」
「だが川前の長は止めてくれと言ったのだろう」
「はい。ですので、今度は別の場所に移住してもらいます」
王の顔が明るくなった。
「本当か。助かる。民はまだまだ溢れておる。今度も新たな領地だな」
検分役は、千曲川を下り、川を渡った対岸に広い平地を見つけていることを伝えた。
「新領地となる以上、今度は長を決め、管理者の意識を高めてから移住させます。人数も一度に百人ほど動かします」
「ほほう、頼もしい」
新領地の長を決める
検分役は、移住を希望する管理者たちを集めた。
宰相も同席し、場を引き締めるように言った。
「者ども、一人が長となり、王の代理として新領地を治めることになる。覚悟はよいか」
管理者たちは生唾を飲み込んだ。
最年長の男が一歩前に出て答えた。
「はい。承知しております。国王様の代理として民を治め、秋には収穫の三割を検分役殿に渡します」
「うむ、よく言った。そなたを長に任ずる」
検分役が続けた。
「新領地へ行くには千曲川を渡らねばならぬ。浅瀬は確認してあるので歩いて渡ることになる。よいか」
「川を渡るのか、、、大きな川だと聞いているが、検分役殿がいるなら大丈夫だ」
宰相が号令をかけた。
「よし、住民を連れて参れ!」
こうして、新たな領地への移住が動き出した。




