2-4 縄文の贈り物
縄文の贈り物
川前の集落では、収穫後の籾を作る作業に、近くの縄文集落の若者たちも加わっていた。
彼らは平地の暮らしを不思議に思っていたが、美味い粥には抗えなかった。
やがて縄文の人々は川前の集落に溶け込み、言葉も同じであったため、混血も生まれた。
縄文の者たちは川に詳しく、渡れる場所や森の動物・植物の知識は弥生の人々よりも深かった。
月日が経つにつれ、彼らは仲間となり、弥生集落にも住むようになった。
ある日、縄文集落の爺さまが布に包んだ大きな壺を運んできて、長に差し出した。
「世話になっている礼だ」と言う。
壺には赤い太い線が描かれており、見慣れない不思議な器だった。
長が眺めていると、そばでその壺をじっと見つめている男がいた。
川前の集落で壺を焼く職人である。
彼は恐縮しながら爺さまに尋ねた。
「あのう、爺さま。この赤い色は、どうやって焼いたのですか」
爺さまは首を振った。
「すまんが、わしには分からん。この壺は山の神に捧げる器でな。長にふさわしいと思って持ってきたのだ」
「どうやって作ったか分からんのか」
「そうじゃ。しかし、山の小屋には焼き物を作る者がまだおる」
「お願いだ。わしはこの集落で壺を焼いている。教えてもらいたい」
職人は爺さまの言葉を頼りに、山の小屋へ向かうことにした。
縄文集落は川を渡ってすぐ先にあったが、焼き物を作る小屋は川を少し上った場所にあるという。
言われた場所で川を渡り、流れの上流へ歩いていくと、川沿いに道のような踏み跡が続いていた。
しばらく歩くと、開けた場所に縄文の小屋が三つほど並んでおり、そのうち一つの屋根から煙が上がっていた。
「おーい、すまん。縄文の爺さまに聞いて来た」
しばらくすると、草で編まれた扉が持ち上がり、男が顔を出した。
小柄だが、上半身はしっかりとした筋肉がついている。
職人は遠慮なく切り出した。
「わしは川前の集落の壺焼きだ。赤い土器を見せてもらえぬか」
「ああ、いいぞ。入れ」
男は移動するグループに赤い土器を渡すこともあったため、気軽に応じてくれた。
中に入ると、地面が深く掘り下げられ、広い空間になっていた。
窯跡が二つあり、一つは今まさに焼かれていて、屋根の穴から煙が立ちのぼっていた。
中は暖かく、壺がいくつも並んでいる。
「今、野焼きをしているんだ。すまんな」
「いや、仕事の邪魔をして申し訳ない」
「焼いている間は暇だからな」
壺を見せてもらい話すうちに、赤い土の存在を教えてもらった。
それは森の奥にあるという。
職人はその場所を教わり、赤土を採り、試しに使ってみた。
やがて、壺の口縁が赤く、側面は薄く、しかし高温でしっかり焼かれた器が出来上がった。
その焼き物は、後に神殿での儀式に使われることになった。




