2-3 縄文の来襲
縄文の来襲
とはいえ、縄文集落との直接の接触はなかった。
彼らは新しいものに興味はあったが、平地の集落はどうにも暮らしにくそうに見え、「自分たちには関係ない」と判断していたのである。
川前の集落の者が森に入っても、縄文の人々と出会うことはなかった。
暮らしの形が、山と平地で自然に分かれていたのであった。
しかし、川前の集落の者が網を作り、川で漁をするようになると、縄文集落の方は穏やかではいられなくなった。
川の反対側で網が張られ魚が採られると、縄文の人々は別の場所を探さねばならなかったのである。
それでも争いは起きなかった。
時は流れ、緑の穂が黄金色の麦秋に変わると、秋になった。稲が実る。すると、全員での収穫が始まった。
歌を歌いながら皆で刈り取る稲刈りは、縄文の人々にとっては珍しい光景で、遠くから興味深そうに覗いていた。
収穫された稲は束ねられ、天日に干された。
数日後、干し上がった稲が広場に集められ、大きな布が地面に敷かれた。
そして、稲を叩いて籾を落とす作業が始まった。これも集落全員が行った。
稲を振り下ろし、地面に叩きつけると籾が飛び散る。
その様子に縄文の人々は「何が起きているのか」と次々に集まってきた。
やがて、平たい石の上でコンコンと音が響き始めた。
皆が笑いながら棒で叩くと、布の上に小さな粒が落ちていく。
「ねえ、あの粒みたいなのは何だ?」
縄文の男が思わず尋ねた。
検分役の若者が答える。彼は移動するグループの出で、縄文側とも顔見知りだった。
「あれが米粒になるんだよ」
「米粒?なんだそれは、、、」
「水に入れて火にかけると、おいしい粥になるんだ」
よく見ると、籾を平たい石の上でさらに叩き、口で軽く吹くと殻が飛んでいく。
「食べてくか?」
「おう、、、」
縄文の面々は、何かうまいものが食べられるのではと胸を躍らせた。
日が傾き、焚き火が起こされ、大きな鍋が火にかけられた。
湯気が立ちのぼり、ほのかな匂いが漂い始めると、期待はさらに膨らんだ。
初めて口にする粥は温かく、果実を煮たものとは違う、口いっぱいに広がるやさしい味だった。
検分役の男が言う。
「明日もやるから、また来いよ。食べさせてやるよ」
縄文の人々は大きく頷き、彼との約束を交わした。こうして、縄文集落は、森にありながら、川前の集落と共生するようになったのであった。




