第8話:神様の本気。これより「ネタバレ禁止(スポイラー・バン)」を開始します
いつも読んでいただきありがとうございます。
またまた、レンが危機に陥ります。
今度は喋ることが出来なくなったとか。
【場所:再構築された空間「深淵のアーカイブ」】
「ハハッ! 見ろよ神様! お前の世界、バグって穴だらけだぞ!」
「このまま脱出して、チャンネル登録者数100万人いくわー!」
レンは七色に発光しながら、崩壊する回廊を走っていた。
カケルから送られたパッチのおかげで、モザイク攻撃は無効化され、視聴者のコメントも戻ってきている。
完全に勝ちムード――に見えた。
だが。
『……騒がしいな』
冷徹な声が響いた瞬間。
レンたちの周囲を彩っていたネオン色の発光が、フッ……と消え失せた。
「えっ?」
「レンさん? 光が……消えた?」
崩壊しかけていた床や壁が、瞬時に修復されていく。
それも、元の石造りではない。
今度は、無限に続く「黒い本棚」と「ノイズ混じりのモニター」で構成された、異質な空間へと書き換えられたのだ。
レンは足を止めた。
「……おいおい。バグ修正が早すぎるだろ」
目の前の空間が歪み、神エニグマが姿を現す。
だが、さっきまでの激昂した様子はない。
骸骨の顔に、底知れない冷笑を浮かべて、静かに佇んでいた。
『RTA走者の小僧が介入したのは計算外だったが……所詮は外部ツールだ』
『私の管理領域の深層まで書き換えて、セキュリティを強化した。もうあのパッチは通用せん』
エニグマが指を鳴らすと、レンのスマホが激しく振動した。
『そして、貴様の戦い方は理解した。……「真実」を暴いて「拡散」することだろう?』
『ならば、ルールを変えよう』
空間に赤い警告文字が浮かび上がる。
【警告:NGワード規制を開始します】
【指定ジャンル:真実】
「は? 何だよこれ」
『ここからは「ミステリーの時間」だ。……謎を暴くことは許されない』
『今後、この空間で「世界の秘密」や「私の正体」、あるいは「攻略法」を口にした場合……』
エニグマはニヤリと笑った。
『ペナルティとして、貴様の「配信」を改竄(フェイクニュース化)する』
「……改竄、だと?」
レンが眉をひそめた瞬間、背後のサラリーマンが叫んだ。
「レンさん! 壁に隠し扉があります! これ、さっきのマップと同じ配置なら……」
バチバチッ!!
サラリーマンが口にした瞬間、レンのスマホから不快なノイズが走った。
そして、コメント欄の空気が一変した。
【コメント欄】
> 視聴者A: え? 何今の?
> 視聴者B: レンさん、なんで一般人を蹴ったの?
> 視聴者C: うわ、最低……
> 視聴者D: え、幻滅しました。登録解除します。
>
「はぁ!?」
レンが叫ぶ。
「蹴ってねぇよ! 何言ってんだお前ら!?」
『フフフ……。視聴者に見えている映像は、今のとは違うぞ?』
エニグマが空中にモニターを出した。
そこには、レンがサラリーマンを無言で蹴り飛ばし、暴言を吐いている「加工された映像」が映し出されていた。
「ディープフェイクかよ……! 神様がフェイク動画作るとか、プライドねぇのか!」
『陰謀の神と言っただろう? 真実をねじ曲げることこそ、我が本分!』
エニグマは両手を広げた。
『さあ、どうする? 隠し扉の場所を言うか? 神の弱点を叫ぶか?』
『「真実」を口にするたびに、貴様の配信にはノイズが走り、視聴者には「貴様が仲間を虐待している映像」や「差別発言をしている音声」が流れる仕組みだ』
レンは唇を噛んだ。
配信者にとって、「炎上」は武器だが、「信用の失墜」は死を意味する。
冤罪動画を流され、味方である視聴者を「アンチ」に変えられること。
これこそが、配信者殺しの特効攻撃だ。
「……ッ、口を封じに来たか」
『喋ってみろ配信者! いつものように、私の黒歴史を笑ってみろ!』
『その瞬間、貴様は「世界中から軽蔑される最悪のクズ配信者」として、社会的に抹殺されるのだ!』
レンは沈黙した。
ネタバレができない。煽ることもできない。
うかつに喋れば、120万人のファンが全員敵に回る。
「レンさん……どうすれば……」
女子高生が震える声で尋ねる。
「何も言わないでください! 喋ったら、レンさんが悪者にされちゃいます!」
レンたちは、無限に続く本棚の迷宮で、立ち尽くすしかなかった。
カケルのような「バグ技(物理)」は使えない。
レンの武器である「口」も封じられた。
『クックック……。静かになったな』
『さあ、ここからは「長編ミステリー」の始まりだ。出口のない迷宮を、数百年かけて彷徨うがいい』
『視聴者が全員「アンチ」に変わり、貴様の心が折れるまでな……!』
エニグマは優雅に玉座(本棚の上)へと戻っていった。
一発逆転の策が見えない、完全な詰み(チェックメイト)。
レンは、コメント欄で増え続ける「最低」「死ね」「通報しました」という文字を見つめ、ギリッと奥歯を噛み締めた。
「……上等だよ」
「RTAじゃねぇんだ。……じっくり腰を据えて、化けの皮剥がしてやるよ」
配信開始から数時間。
初めて、レンの表情から「余裕」が消えた。
(第8話・完)
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
「神様ひどすぎるw」「レンガンバレ」と思っていただけたら、
ページ下部にある【☆☆☆☆☆】の評価ポイントを入れて応援していただけると、執筆の励みになります!
(広告の下あたりにあります! ↓↓↓)
ブックマーク登録もぜひよろしくお願いしますm(_ _)m




