第6話:「放送事故」だと思った? 残念、ただの「ドッキリ」でした
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、神様が必死に考えた「放送事故」を、レンが台無しにします。
【場所:最終エリア「審判の謁見室」】
『死ねぇぇぇッ!!』
神エニグマの大鎌が振り下ろされる。
レンは紙一重でそれを回避し、玉座の影へと転がり込んだ。
「っと、あっぶね! ガチで殺す気かよ!」
「レンさん!」
サラリーマンが、恐怖で動けない女子高生を庇って叫ぶ。
『ハハハ! 逃げ惑え! 配信はもういない!』
エニグマは愉悦に歪んだ骸骨の顔で笑った。
『貴様が頼みの綱にしていた視聴者たちは、今頃「真っ黒な画面」を見て解散している頃だろう!』
「……へぇ」
レンは柱の陰で息を整えながら、挑発するように声を上げた。
「じゃあ聞くけどさ、運営さん。俺たちを殺した後はどうすんの?」
『決まっている。また地球から新しい人間を拐い、記憶を消して、私の玩具にするのだ』
エニグマはペラペラと喋り出した。誰も聞いていない(と思っている)からこそ、本音が溢れ出る。
『私はこの世界の絶対神! 人間どもの絶望する顔こそが、私の糧なのだよ!』
『前回参加した30人も、前々回の50人も、全員この手でミンチにしてやったわ! ハーハッハッハ!』
決定的な証言。
大量誘拐と大量殺人の自白。
レンは、ポケットの中でスマホを握りしめ、ニヤリと笑った。
「……言質、取ったぜ」
レンは柱の陰から飛び出し、エニグマの前に立った。
『ほう、命乞いか? それとも最期の悪あがきか?』
「いや、『ネタばらし』だよ」
レンはポケットからスマホを取り出し、エニグマに向けた。
黒く沈黙していたはずの画面を、指でタップする。
パッ。
画面が明るくなり、そこには――。
【同接:1,200,000人】
【コメント流速:測定不能】
「は……?」
エニグマの動きが止まる。
「あのさぁ、陰湿神さん。『地球の神様』がくれたスマホだぞ?」
レンは憐れむような目をした。
「お前ごときの結界で、電波が止まるわけないだろ。ただ俺が『画面をオフ(スリープ)』にしてただけだ」
『なっ……!?』
「『放送事故』を装って、お前の本音を引き出すためのドッキリでしたー!」
レンはカメラに向かってピースした。
「みんなー! 今の自白、録音したー!? 拡散よろしくー!!」
【コメント欄】
> 視聴者A: 聞いたぞオラァァァッ!!
> 視聴者B: 自白キターーーwwww
> 視聴者C: 30人殺害とかガチの邪神じゃねーか!
> 視聴者D: 許さん。特定班、こいつの神殿の住所特定しろ。
>
コメント欄は、先ほどまでの「お遊び」ムードとは違っていた。
本当の悪意に対する、120万人の「義憤」と「殺意」が渦巻いていた。
『き、貴様……私を嵌めたなァァァッ!!』
エニグマが逆上し、鎌を振り上げる。
『ならば、スマホごと粉砕してやる! 証拠ごと消え失せろ!』
「おっと、暴力反対」
レンはスマホの画面にある『ライト』のアイコンに指をかけた。
「みんな、こいつ陰湿な癖に『光』に弱いらしいんだわ(さっきの黒歴史ポエム情報)。」
「だからさ……『いいね(高評価)』でフラッシュ焚いてくんない?」
レンがアイコンをタップした瞬間。
カッ!!!!
スマホのLEDライトから、太陽ごとき閃光が放たれた。
ただのライトではない。
120万人の視聴者が押した「高評価」のエネルギーが、地球の神様の魔改造スマホを通して、物理的な「聖なる光」へと変換されたのだ。
『グアアアアアアアアアアアッ!?』
エニグマの骸骨の体が、光に焼かれて黒煙を上げる。
「目が! 目がああああああッ!!(目玉ないけど)」
「うっわ、眩しっ!」
レン自身も目を覆うほどの光量。
それは、隠し事と闇を愛する陰謀の神にとって、最も忌むべき「真実の光」だった。
「いけぇぇぇぇッ! そのまま浄化しちまえ!」
サラリーマンが拳を突き上げる。
『や、やめろ……! 私の体が……崩れる……!』
『私は神だぞ! こんな……「いいね」ごときにぃぃぃぃッ!!』
「時代が変わったんだよ、神様」
レンは光の中で言い放った。
「今は『信仰心』より『承認欲求』の方が、火力が高いんだよ」
ドォォォォォン!!!!
エニグマの体は、光に飲み込まれ、跡形もなく消滅した。
霧が晴れ、禍々しい謁見室に静寂が戻る。
「はぁ、はぁ……。や、やったか……?」
サラリーマンが腰を抜かしながら呟く。
「神様を……倒した……?」
「ふぅ。ま、こんなもんか」
レンは熱を持ったスマホを振り、カメラに向かってVサインをした。
「みんなー! 協力サンキュー! ラスボス撃破、これにて配信終r……」
レンが「配信終了」のボタンを押そうとした、その時だった。
ピロリン♪
スマホが鳴った。
スパチャではない。「システム通知音」だ。
レンが画面を見る。
エニグマを倒したはずなのに、配信の「同時接続数」が減るどころか、異常な速度で増え続けている。
【同接:1,200,000人 ⇒ 5,000,000人】
【同接:Error(測定不能)】
「……あ?」
レンの背筋に、冷たいものが走った。
コメント欄の流れる速度が、目にも止まらぬ速さになり、そして――突然、すべて同じ文字に書き換わった。
【コメント欄】
> 視聴者A: 許サナイ許サナイ許サナイ
> 視聴者B: ボクノ世界ヲ壊スナ
> 視聴者C: BANシテヤル BANシテヤル
> 視聴者D: ■■■■■■■■■■
>
「ひっ……!?」
画面を覗き込んだ女子高生が悲鳴を上げる。
「レ、レンさん! コメントが……みんな『神様の言葉』になってる!?」
レンは空を見上げた。
晴れたはずの天井に、無数の「目玉」が浮かび上がり、ギョロギョロとレンたちを見下ろしていた。
『……フフフ。面白い』
『アバター(端末)を一つ壊された程度で、私が消えると思ったか?』
声は、どこか一点からではなく、世界そのものから響いていた。
『私はこの世界の管理者。貴様らがいる空間そのものが、私の体内だ』
『さあ、配信者よ。……ここからは「BAN祭り(垢BAN)」の時間だ』
レンは引きつった笑みを浮かべ、バグり始めたスマホを握りしめた。
「……へぇ。第2形態(本垢)のお出ましってわけか」
(第6話・完・修正版)
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
「神様ざまぁw」「レンひどすぎる(笑)」と思っていただけたら、
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