第3話:「音を立てたら即死」? スパチャ読み上げで爆音流すわw
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、神様が必死に考えた「静寂の迷宮」のギミックを、レンが台無しにします。
【場所:第3エリア「静寂の迷宮」】
「うぅ……暗い……怖い……」
「しっ! 静かに! 何か来るぞ……!」
レンたち一行が足を踏み入れたのは、光の届かない漆黒の迷路だった。
床には骨が散らばり、少しでも足音を立てれば、反響して奥底まで届いてしまう。
『フフフ……。どうだ、この張り詰めた空気は』
神エニグマの声が、今回はあえて小声で、ねっとりと響いてくる。
『ここは「静寂の迷宮」。徘徊しているのは、視覚を持たず、聴覚だけが異常発達した怪物「盲目の処刑人」だ』
『奴は少しの物音でも聞きつけ、その大鎌で音源を両断する。……つまり、ここでは「喋ること」は死を意味するのだ!』
エニグマは勝ち誇っていた。
配信者にとって、最も致命的な状況。それは「喋れないこと」だ。
実況もできない、ジョークも言えない、ただ無言で怯えて逃げ回るだけの映像など、視聴者はすぐに飽きて離脱するはずだ!
『さあ、黙って震えるがいい! 配信の盛り上がりなど作れるものか!』
ズズズ……ッ。
迷路の奥から、腐った肉を引きずるような音が近づいてくる。
身長3メートル、目玉のない顔に巨大な耳だけがついた怪物が、鎌を引きずって現れた。
女子高生が口を手で覆い、涙目で震える。
(声を出したら……殺される……!)
極限の緊張感。
だが、レンはまたしてもスマホを操作し始めた。
「……」
レンは無言のまま、ニヤニヤしながらアプリの設定画面を開く。
そして、『音声読み上げ機能(TTS)』をONにした。
ピロリン♪ (軽快な通知音)
『あ、テス、テス。……ふぅ、これでよし』
スマホのスピーカーから、機械音声(ゆっくりボイス的なもの)が爆音で流れた。
『ギャアアアアッ!?』
怪物が反応する。音のした方――レンの方へ猛ダッシュを開始した。
「ひっ!?」
参加者たちが凍りつく。
だが、レンは動じない。彼は手元のドローンを操作し、怪物とは逆方向の通路へと飛ばした。
そして、レンはフリック入力でコメントを打つ。
レンのコメント:
『みんなー! 今からこの怪物と「ダルマさんが転んだ」しまーす! スパチャ(投げ銭)で怪物誘導してくれ!』
その瞬間、視聴者たちが意図を理解し、悪ノリを開始した。
チャリーン♪ (1万円の赤スパチャ)
音声読み上げ: 『右の通路へGOGOGO!!! 爆音なら任せろバリバリバリ!!!』
スマホではなく、遠くへ飛ばしたドローンのスピーカーから、視聴者のメッセージが大音量で再生された。
「グルァッ!?」
怪物はレンの目の前で急ブレーキをかけ、音がしたドローンの方へ向き直った。
「ガアアアアッ!!」
怪物がドローンを追いかけて走り去っていく。
『なっ……!?』
神エニグマが絶句する。
『貴様……ドローンを囮にしているのか!? しかも視聴者の金で!!』
レンは無言でVサインをし、優雅に歩き出した。
スマホには、絶え間なくスパチャ通知が届いている。
チャリーン♪
読み上げ: 『怪物くん、こっちこっち~www(爆音のサイレン音)』
チャリーン♪
読み上げ: 『左の壁に激突しろオラァ!(叫び声)』
遠くの通路で、「ドカーン!」「バキッ!」と怪物が壁に激突する音と、視聴者の好き勝手なコメント音声が響き渡っている。
絶対的な捕食者だったはずの「処刑人」は、今やドローンから流れる視聴者の声に振り回され、右往左往する哀れなピエロと化していた。
レンはフリック入力で参加者たちに指示を出す。
レンのメッセージ:
『今のうちにゴールするよ。あ、あと迷路の地図、特定班が作ってくれたから共有するわ』
レンがスマホをかざすと、AR(拡張現実)で迷路の正解ルートが地面に矢印で表示された。
上空からドローン映像を見ていた視聴者たちが、リアルタイムでマッピングを完了させていたのだ。
「す、すごい……」
サラリーマンが呟く。
「僕たちは、ただ歩くだけでいいなんて……」
『ふざけるなァァァッ!!』
エニグマの叫び声(小声)が響く。
『私の「静寂の迷宮」が! 爆音と笑い声でディスコ(クラブ)みたいになっているじゃないか!! 雰囲気ぶち壊しだ!!』
レンは出口の扉の前で立ち止まり、カメラに向かって音の出ない拍手をした。
そして、最後のダメ押しとなる一撃が届く。
ドチャリーン♪ (5万円の虹スパチャ)
読み上げ: 『神様乙www アーカイブで怪物くんのダンス動画作っとくね~♡』
遠くで、疲れ果てた怪物がへたり込んでいるのが見えた。
レンたちは、傷一つ負うことなく、悠々と第3エリアをクリアした。
【現在の同接:200,000人】
【トレンド1位:#神様のペット虐待】
「……」
レンは出口を出たところで、ようやく口を開いた。
「ぷはっ! 黙ってるの疲れたー!」
「ま、視聴者の『指示厨』のおかげで楽勝だったね。サンキューみんな!」
もはや、どんなギミックも彼らの「遊び場」にしかならなかった。
神エニグマのプライドは、スパチャの通知音と共に粉々に砕け散ろうとしていた。
(第3話・完)
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
「神様ざまぁw」「レンひどすぎる(笑)」と思っていただけたら、
ページ下部にある【☆☆☆☆☆】の評価ポイントを入れて応援していただけると、執筆の励みになります!
(広告の下あたりにあります! ↓↓↓)
ブックマーク登録もぜひよろしくお願いしますm(_ _)m




