第21話:NPCだと思ってた? 全員「強制労働させられた住人」でした
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とうとう、最終回です。
【場所:再生された世界・「始まりの広場」】
『ぐぬぬ……重い……。私の魔力が……住人どもの維持費に吸われていく……』
空に浮かぶ黒い球体(元・神エニグマ)が、苦悶の声を上げながら回転している。
彼が必死にサーバーを回しているおかげで、世界は美しい緑の大地へと戻りつつあった。
「ふぅ。さて、帰る準備もできたし……」
レンが伸びをしていると、サラリーマンの鈴木さんが震える声で指差した。
「レ、レンさん……! あれを見てください!」
「ん?」
レンが振り返ると、崩壊した迷宮や、不気味な洋館の廃墟から、ゾロゾロと「人影」が出てくるのが見えた。
第1話に出てきた「死体役」の人形や、第3話の「怪物」、第4話の図書館にいた「幽霊」たちだ。
彼らの体から、禍々しい「呪いの霧」が晴れていく。
すると、怪物の姿が解け、中から普通の人間の姿をした人々が現れた。
「あ、ありがとう……!」
「やっと……体が動く……」
「俺たち、何百年も『同じセリフ』を言わされていたんだ……」
彼らはこの世界「ミステリオン」の原住民たちだった。
神エニグマによって、永遠に続くミステリー劇の「登場人物」として、意思を奪われ、配役を強制されていたのだ。
「被害者役」として何度も殺される役。
「犯人役」として何度も断罪される役。
「怪物役」として徘徊させられる役。
そんな地獄のループから、レンの「神殺し」と「システム改変」によって、ようやく解放されたのだ。
「うわぁ……。マジかよ」
レンが頭をかく。
「あの神様、地球人だけじゃなくて、自分の世界の住人も『おもちゃ』にしてたのか」
『……フン。私の脚本通りに動く、優秀な駒たちだったわ』
空からミニ・エニグマの憎まれ口が降ってくる。
『だが、管理権限が剥奪された今……奴らは自由だ。勝手にしやがれ』
一人の老婆(元・魔女役)が、レンの前に歩み寄ってきた。
「旅の方……。あなた様が、あの支配者を倒してくださったのですか?」
「あー、まあね。倒したっていうか……」
レンは空の球体を指差した。
「『便利な電球』に変えてやっただけだけど」
「おお……なんと慈悲深い……」
住人たちが涙を流して感謝する。
「あの暴君を殺さず、逆にこの世界を支える『礎』にしてくださるとは……!」
「これからは、あの方の魔力を吸って、私たちは平和に暮らせます!」
『やめろ! 感謝するな! 私はお前らが憎い!』
『私の魔力で飯を食うな! 恥を知れぇぇぇッ!!』
元・神様の悲痛な叫びは、住人たちの歓声にかき消された。
かつて支配していた民衆から、これからは「エネルギー源」として搾取され続ける。
これぞ、因果応報の極みだ。
「……レンさん」
女子高生のサヤカちゃんが、スマホを握りしめて言った。
「私、この光景……一生忘れません」
「おう。俺もだ」
レンは、新しいスマホ(地球神から支給された新品)で、住人たちとの記念写真を撮った。
パシャッ!
笑顔のレン、泣いている鈴木さんとサヤカちゃん、そして後ろで手を振る解放された住人たち。
さらにその遥か上空には、悔しそうに光る「黒いボール(神様)」が映り込んでいた。
「よし! これでサムネ画像もバッチリだ!」
レンは空に向かって手を振った。
「じゃあな、陰湿ボール! 真面目に働けよ! サボったら地球神に通報するからな!」
『二度と来るなァァァッ!! 疫病神めぇぇぇッ!!』
レンたちの足元に、地球への帰還ゲート(光の柱)が現れる。
光に包まれながら、レンは最後まで「配信者」らしく、カメラに向かって締めくくった。
「というわけで、今回の異世界攻略はこれにて終了!」
「また次の世界で会おうぜ! チャンネル登録、よろしくな!」
【配信終了】
【アーカイブを保存しました】
光が弾け、レンたちの姿は消えた。
残されたのは、平和を取り戻した世界と、ブツブツ文句を言いながらも世界を照らし続ける、ちょっと可哀想な神様だけだった。
(『地球の神様、配信りにつき。』・完)




