第13話:暗闇のASMR。……聞こえるか? これが「死」の音だ
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、ついに神様がレンに完全勝利します。
【場所:ドロドロの深淵(元・謁見室)】
【配信状態:映像なし / 音声:ノイズと打撃音のみ】
バキッ! ドカッ!
暗闇の中で、生々しい音が響く。
「がッ……はっ……!」
レンが血反吐を吐きながら、泥の床を転がる。
肋骨が数本イカれたかもしれない。呼吸をするたびに、焼けるような痛みが走る。
『どうした、配信者。口数が減ったな?』
闇の中から、不定形の神エニグマの声が這い寄ってくる。
『いつものように喋らないのか? 「みなさーん! 今、神様にボコボコにされてまーす!」とな』
『もっとも、そのスマホは泥の中だ。叫んだところで、誰にも届かんがな』
レンは震える手で、泥に埋まったスマホの方へ這っていこうとする。
しかし。
グシャッ。
エニグマの触手が、レンの手首を無慈悲に踏みつけた。
「あぐっ……!」
『触らせるとでも思ったか?』
エニグマが嘲笑う。
『学習したと言っただろう。貴様にツールを持たせれば、ロクなことにならない。……だから、まずは手足を奪うことにした』
エニグマの泥が、レンの両手足を拘束し、十字架のように吊り上げた。
「くっ……! 陰湿さが……レベルアップしてやがる……」
レンが強がりを言うが、その顔には冷や汗が流れている。
『視聴者も哀れなものだ』
エニグマは、泥に埋もれたスマホを見下ろした。
『今頃、真っ暗な画面の前で、「レンさん?」「どうなったの?」とパニックになっていることだろう』
『想像してみろ。何も見えない暗闇から、貴様の「苦悶の声」と「骨が折れる音」だけが、ASMRのように流れてくる恐怖を』
エニグマは、配信者としてのレンのプライドを、徹底的に踏みにじりに来た。
「楽しい配信」を「トラウマ音声」に変える。
それが、お喋りな配信者への最大の復讐だ。
レンは、吊るされたまま、ヒューヒューと息を漏らし、それでも口の端を吊り上げた。
「ハハッ……。ASMRかよ……。需要あるかな……」
『まだ軽口を叩く余裕があるのか』
「当たり前だろ……。俺はストリーマーだぞ……」
レンは血まみれの顔で、見えないカメラ(スマホ)の方を向いた。
「みんな……聞いてるか……?」
「これが……『神様の暴力』の音だ……。レアだぞ……録音しとけ……」
『……不愉快だ』
エニグマが触手を伸ばす。
『その口、永遠に塞いでやろう』
黒い泥がレンの顔を覆い、口の中に侵入してくる。
「んぐっ……!? がぼっ……!」
呼吸ができない。声が出せない。
レンの視界が急速に暗くなっていく。
(クソッ……ここまでか……。カケル先輩のツールも、スマホがなきゃ使えねぇ……)
(マジで……詰んだ……?)
意識が遠のく中、レンは最後に見た。
泥に埋もれたスマホの画面が、一瞬だけチカッと光ったのを。
しかし、エニグマはそれを見逃さなかった。
『ん? まだ動くのか、この端末は』
エニグマはスマホを拾い上げると、画面を覗き込んだ。
『……ほう。「SOS」の信号か? それともカケルとかいう小僧からの通信か?』
『無駄だ。泥でコーティングしてある。電波など通さん』
エニグマはスマホを、さらに深く、自身の体(泥)の核へと飲み込んだ。
『このスマホは、私の体内で消化する。貴様らの「繋がり」は、ここで完全に断たれるのだ』
レンの意識がプツンと途切れた。
サラリーマンと女子高生の絶望的な悲鳴だけが、暗闇に虚しく響き渡る。
……。
…………。
【配信ステータス:OFFLINE】
完全敗北。
神エニグマは、ついに配信の光を消し去った。
(第13話・完)
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
今回も「神様ひどい」「レンガンバレ」と思っていただけたら、
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