第12話:サーバーダウン? それは「リミッター」が外れただけですが
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、神様が少しずつ本気になっていきます。
【場所:崩壊した深淵のアーカイブ ⇒ ???】
【SYSTEM ERROR】
モニターが爆発し、天秤が砕け散る。
レンと視聴者たちの「21億票」という暴力的なスパムによって、神の用意した処刑システムは完全に崩壊した。
「はぁ……はぁ……。勝った……」
サラリーマンがへたり込む。
レンも、煙を上げるスマホを振りながら、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「へっ。神様と言っても、所詮は『システム』か。計算量で殴れば壊れるポンコツだな」
レンはカメラに向かってVサインを作ろうとした。
「みんな、お疲れ! ラスボス撃破のスクショタイムだ――」
ズズズズズズズズ……ッ。
その時。
崩壊したはずの空間から、「黒い泥」のようなものが溢れ出し、レンの足元を濡らした。
「……あ?」
レンが足元を見る。
デジタルなノイズではない。もっと生々しく、粘着質で、悪臭を放つ「泥」だ。
『……勘違いするなよ、人間』
地の底から響くような、重低音。
黒煙の中から、ボロボロになった骸骨のアバターが立ち上がる――いや、溶けていく。
『貴様らが壊したのは、あくまで私が用意した「ゲームのユーザー・インターフェース(UI)」に過ぎない』
『人間にも分かりやすいように、わざわざ「投票システム」だの「天秤」だの「モニター」だのを作ってやっていたのだぞ?』
骸骨の仮面が剥がれ落ちる。
その下から現れたのは、骨でも肉でもない。
無数の「目玉」と「口」が蠢く、不定形の影――神エニグマの「本体(真の姿)」だった。
『それを壊して喜ぶとは……。これだから浅はかな現代人は困る』
「なっ……!?」
レンが後ずさりする。
スマホのカメラを向けるが、画面にはノイズが走り、エニグマの姿が映らない。
高画質4Kカメラでも捉えきれない、高次元の存在。
『UIが壊れたのなら、仕方がない』
エニグマの無数の口が、一斉に嘲笑う。
『ここからは「アナログ」でやろう』
『投票も、コメントも、画像認証も関係ない。……ただの「質量」と「暴力」の時間だ』
ドチャッ!!
「うわああああッ!?」
サラリーマンと女子高生が、床から伸びた黒い泥に足を掴まれ、宙吊りにされた。
「いやだ! 放して!」
「おい神! 何してんだ!」
レンが叫ぶ。
『配信者よ。貴様は「ネットの力」で戦ったな』
エニグマの巨大な手が、レンの目の前に迫る。
『だが、ネットが通じない「物理的な距離」で……貴様自身に何ができる?』
バキィッ!!
「がはっ!?」
レンの体が吹き飛ばされ、石壁に激突する。
HPバーも、ダメージ表記も出ない。ただのリアルな激痛。
スマホが手から離れ、床を滑っていく。
「あ……俺の、スマホ……!」
『おっと』
エニグマの触手が、床のスマホを拾い上げた。
『これが貴様の「命」だな?』
エニグマはスマホを、ねっとりとした黒い泥で包み込んだ。
破壊はしない。
ただ、カメラレンズとマイクを塞ぎ、「何も映らない、何も聞こえない」状態にしたのだ。
【配信画面の状態:真っ暗闇】
【音声:ゴボボボ……(泥の音のみ)】
【コメント欄】
> 視聴者A: おい! 何も聞こえねえぞ!
> 視聴者B: 画面真っ暗だ!
> 視聴者C: レンさん!? 生きてる!?
> 視聴者D: バグか!? いや、スマホが埋められた!?
>
120万人の視聴者は、突然の暗闇に取り残された。
レンの声も届かない。
ただ、どこかで誰かが悲鳴を上げている微かな音だけが、ノイズ混じりに響いてくる。
『さあ、絶望しろ』
エニグマが、生身のレンを見下ろす。
『視聴者は「何も見えない」。貴様は「助けを呼べない」。そしてここには、便利なツールも攻略サイトもない』
レンは血の混じった唾を吐き捨て、震える足で立ち上がった。
「はっ……。RTA野郎より……タフじゃねぇか……」
『当たり前だ。私は「粘着質」で有名でな』
エニグマが笑う。
『簡単には終わらせんぞ。……貴様が泣いて詫びるまで、この泥の中で永遠に「放送事故」を続けようじゃないか』
RTA(速さ)では攻略できない、泥沼の耐久配信。
神様はまだ、本気を出したばかりだった。
(第12話・完)
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