第10話:リスナー参加型企画? 「誰を殺すかアンケート」の時間だ
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、神様が必死に考えた「参加型イベント」が飛び出します。
レンに対抗手段はあるのでしょうか。
【場所:深淵のアーカイブ(迷宮エリア)】
『……フフフ。ハハハハハハッ!!』
突然、神エニグマの高笑いが迷宮に響き渡った。
それは、余裕を失った怒りの声ではない。
何かに気づき、吹っ切れたような、冷たく粘着質な笑い声だった。
「……あ?」
レンが眉をひそめる。
「何笑ってんだよ、陰湿神。お前の『ネタバレ規制』はもう突破したぞ?」
エニグマは空中に巨大なモニターを出し、そこに流れるコメント欄を指差した。
『ああ、認めてやろう。貴様は口が上手い。嘘と皮肉でシステムを欺き、120万人の信頼を取り戻した』
『だが……貴様が信頼しているその「120万人」は、果たして本当に貴様の味方かな?』
「何が言いたい?」
『彼らは安全圏(地球)から、無責任に「神ざまぁw」と楽しんでいるだけの観客だ。……ならば、彼らにも「当事者」になってもらおうか』
エニグマが指を鳴らすと、レンたちの前に巨大な天秤が現れた。
そして、強制的な転移魔法が発動する。
「きゃあっ!?」
「うわっ!」
天秤の右の皿には「女子高生」が。
左の皿には「サラリーマン(鈴木)」が、それぞれ光の鎖で拘束された。
真ん中には、鋭利な刃物が振り子のように揺れている。
『さあ、緊急企画だ配信者』
『これより「リスナー参加型・処刑投票」を行う』
レンの表情が凍りついた。
「……は?」
『ルールは簡単だ。レン、貴様は手出し無用。決めるのは視聴者たちだ』
『コメント欄のアンケート機能を使う。「右」が多ければ女子高生を、「左」が多ければサラリーマンを救う。……選ばれなかった方は、その刃で真っ二つだ』
【緊急アンケート開始】
A:女子高生を助ける(サラリーマン死亡)
B:サラリーマンを助ける(女子高生死亡)
制限時間:60秒
究極のトロッコ問題。
しかも、それを「数」の暴力で決めさせる。
【コメント欄】
> 視聴者A: は? 何これ?
> 視聴者B: 選べるわけないだろ!
> 視聴者C: ふざけんな神!
> 視聴者D: でも選ばないと……時間切れで両方死ぬとか言いそう……
>
『その通りだ。投票率が50%を超えなければ、両方処刑する』
エニグマの声が弾む。
『さあ選べ! 貴様らの指先一つで、人の命が消えるのだ! 安全圏からの「高みの見物」は終わりだ。貴様らも「殺人者(共犯)」になるのだよ!』
「やめろォォォッ!!」
レンが天秤に駆け寄ろうとするが、見えない壁に弾き飛ばされる。
「ぐっ……! 一般人を巻き込むな!」
『苦しいか? レン。……だが、これが「配信」だろう?』
『数字が全て。多数決が正義。貴様が愛したインターネットの「民主主義」の究極系だ!』
天秤の上の二人が泣き叫ぶ。
「嫌だ! 死にたくない!」
「お願いします……助けて……!」
コメント欄はパニック状態だった。
「Aだ! 女子高生の方が未来がある!」「いやBだろ、鈴木さんには家族がいるんだぞ!」「選べない」「吐き気がする」
数字が目まぐるしく変動する。
【A:48% B:42%】
レンは、スマホの画面を見つめ、ギリッと唇を噛み締めた。
嘘や皮肉でどうにかなる状況ではない。
これは、視聴者の「良心」を人質に取った、最悪の心理戦。
「……神様への応援、届いたみたいだな」
レンが低く呟く。
「ここまで『胸糞悪いこと』を平気でやれるのが、お前って神様だったな」
『褒め言葉として受け取っておこう。……残り10秒!』
エニグマは勝ったと確信していた。
どちらが死んでも、視聴者には「自分が殺した」というトラウマが残る。
レンのチャンネルは「人殺し配信」として炎上し、二度と笑えないコンテンツになる。
「……レンさん」
拘束されたサラリーマンが、震える声で言った。
「……Aにしてください。あの子を……助けてやってくれ」
「鈴木さん!?」
「僕はいい。妻子持ちのオッサンより、若い子の方が……」
その自己犠牲が、さらに視聴者の心をえぐる。
「鈴木さんいい人すぎる」「殺せない」「でもAに入れないと……」
『残り3、2、1……』
「……クソが」
レンはスマホを地面に叩きつけそうになり――そして、踏みとどまった。
その瞳に、再び狂気的な光が宿る。
「おい神。……今、『多数決が正義』って言ったな?」
『……あ?』
「なら、見せてやるよ。……120万人が本気でキレた時の、『組織票』の恐ろしさをな」
(第10話・完)
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「神様ひどい」「鈴木さんガンバレ」「女子高生負けるな」と思っていただけたら、
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