乙女の気持ち
あれからというもの凛は俺の家で日を過ごすたび、凛の中で何か後ろめたい気持ちがあるのも増していった気がした。
「なあ凛、お前最近変じゃないか?もし俺にできることがあるなら言ってくれよ。」
俺はなるべく自分が知らないふりをして凛に何かできることはあるかを尋ねた。
「いや何も変じゃないから、ほら、そんなこと言ってないで勉強の続きしよ。」
凛は顔には出さないものの、明らかにその返答から自分の心の中で罪悪感という大きな荷物をしょってる気がした。
「いや明らかに何か変だろ。俺に何かできるのであれば遠慮なくいってくれよ。」
「だから何もないって、もうその話終わりにしよ、時間の無駄。」
凛は少し怒った口調で俺に言った。
「無駄じゃない。何をするにあたっても自分の心が正常じゃないと身につかない、ほら個々の問題も昨日教えたばっかなのにまた間違えているじゃないか。」
俺がそういった瞬間凛は勢いよく立ち上がり今まで聞いたことのないような大声で俺に怒鳴った。
「哲矢に私の何がわかるっていうの、別にあんたとはもともと仲が良いわけじゃないし、まだ一緒に暮らして一週間しかたっていないじゃない。」
そういうと凛は財布もスマホも忘れて、靴下も上着も着ず、家を飛び出してしまった。
「お、おい待てよ凛。」
俺は急いで追いかけようとしたが、机の角に足をぶつけてしまい、その場にしばらくうずくまってしまった。
「うわ痛、痛すぎるなんでこんな時に、もう最悪だ。」
俺は急いで立ち上がり、凛を追いかけようとしたがもう見える範囲に凛の姿はなかった。
「あーもう最悪だ、どうすればいいんだよ。こうなったら追いかけようもないぞ。」
そう俺が絶望しかけていた時、
「どうしたの。高科さんならさっきあっちの方向に走っていったわよ。」
「あ、ゆみ。お前さっき凛のこと見たのか。」
「うん、でもなんで高科さんが家を飛び出すの、なんかまたノーデリカシーなことでも言ったの。」
「いや違うんだ。」
俺はさっきまでの経緯をすべて説明した。
「へえ、そんなことが。でもそれは哲矢が悪いわよ、女の子が聞いて細そうにないことをしつこく聞くなんて男としてよくないわよ。」
確かに由美の言う通りだと思いながら、俺は反省した。
「それは確かに俺が悪かったけど、でも今はそんな場合じゃないんだ、お前も凛を探すの手伝ってくれないか。」
「それはいいけど、なんも考えなしに探すのはさすがに無理よ。なにか居場所がわかるようなものがないと。」
「あ、でも確かあいつ上着も着てないし財布も忘れているから、多分中で暖まれるどこかに行くと思う。」
俺はさっき凛が長袖一枚だったことを踏まえ、行きそうな場所を推理した。
「確か高科さんって、この街にきてまだ一週間よね。それならあまり遠いところには行けないはず。」
「そうだよな、ならこの近くにある公共施設が怪しくないか、例えば区役所とか。」
「確かに、でも区役所は高科さんが言った方向とは逆だし、あっちの方向にあるのは体育館と図書館ぐらいよ。」
「よし、じゃあ俺は図書館に行くからお前は体育館に行ってくれ。」
「わかった。」
俺とゆみは手分けして二人で探すことにした。
(まあ、あいつのことだ。そこまで体力はないしすぐに疲れてどこかで休んでるだろう。)
俺はそう思い、凛の捜索に当たった。
俺の家から図書館までは大体二キロほどの距離だったのですぐにつくことができた。
「はあ、あいついるかなあ。もしこれ以上遠くなっちまうとかなり厄介だからなあ。」
俺はそう思いながら図書館を回り凛を探した。
「いないかなあ、自習室も探したけど、居なかったし体育館かなあ。」
俺はそう思い図書館を去ろうとすると、ちょうどトイレのドアが開き、凛が顔を出した。
「あ、凛やっぱりここにいたんだ、」
俺が言い終わる前に凛は俺に抱きつき、半べそをかきながら言った
「ごめん、哲矢。別に哲矢が悪いわけじゃないのに、むしろ心配してくれたのに私哲矢にひどいこと言っちゃって。ごめんね。」
半べそをかいているの姿は見て思わず俺は
「可愛い。」
と言ってしまった俺はまったくもってそんなことを言うつもりではなかったのに思わず口に出てしまった。でもそれくらい半べそをかいている凛の姿は可愛かったのだ。
「え、急にどうしたの。」
凛もあまりの突然に突然のことだったのでびっくりして涙も止まっていた。
「いや、あの何でもない。聞かなかったことにしてくれ。」
俺は顔を真っ赤に染めながれ凛に言った。
「何急に。私がかわいいとかそんなこと今まで一度も言ったことないじゃない。」
凛は笑いながら言ってきた。
「な、何笑ってるんだよ。こっちは心配してお前のこと探したんだぞ。」
「いや、それはありがたいけどかわいいって。まあ、ありがと。」
「それはどっちの意味で?」
「どっちもだよ。」
凛は笑いながら俺のほうを見て言った。
凛の顔はさっき泣いていたせいもあってか涙の反射がより一層凛の顔の美しさを際立たせていた。
「まあいいや、とりあえず帰って勉強の続きするぞ、なんかお前も元気になったみたいだし。」
それから俺はゆみにも連絡をした。
するとゆみはすぐに俺らのいる図書館へと来た。
「もう、高科さんいやもう凛ちゃんと呼ばせてもらうわ、あのね、確かにこうやって乙女の心をわかってもらえなくて家を飛び出すなんてことはアニメではよく怒る展開だけど、それはもっと主人公と仲を深めてからじゃないと、もっと凛ちゃんが哲矢を好きになってからやりなさい。」
「何言ってんだお前。ほら凛も困ってるじゃないか。」
俺は少しあきれながら言うと凛はだれにも聞こえないような声で言った
「だからやったのよ。」
「うん、なんて言ったんだ。」
「いや、何にも。」
「なんでお前毎回そんな俺に勝ったような顔をしてるんだ。」
俺は訳がが分からず寒いので早く帰ることにした。
「さっきのって、いやまさか。もしかして凛ちゃん、」
「おいなに突っ立ってんだゆみ、行くぞ。」
「あ、うんもう行く。」
そうして俺はちょっとした捜索活動を終えた。