新たな隣人
俺らが夕飯を食べていた時俺はふとさっき気になったことを言った。
「あっそう言えばお前なんだ髪からいいにおいがするんだ?ろくに風呂も入ってないはずだろ。」
「まあそれは東口がゴミ出しに行ったときに風呂借りたからだよ、いい湯だったよ。てかなんで私の髪のにおい嗅いでんだよ。それはわすがに引くわぁ。」
俺は知れっと聞いてしまったことがとてつもなく気持ちの悪いものだと初めて気づいた。
「あっいやそれはお前がテスト解いてるときにちょっと匂ってきたからだよ。ていうか何勝手に人の風呂使ってんだ。いったよな俺が世話をする代わりお前はここが俺の家だということを忘れるなと。お前もうその約束破ってんじゃねえか。」
「約束は指切りげんまんをしないと約束をしたことにはならないから。」
高科はじゃあ指切りげんまんする?といった顔で小指を俺の前に出してきた。
「じゃあしよう。はい」
俺はちょっと照れながらも小指を前に出した
「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます指切った。」
俺は顔を真っ赤にしながらもちらっと高科のほうを見たすると高科は俺が照れるのをわかっていたように勝ち誇った顔で俺のほうを見つめていた。
「なっお、お前なんなんだよ、なんでちょっと自分が勝ったみたいな顔をしてんだよ。」
「いやあ、別にぃなんかちょっと顔が赤くなってるなあと思って。」
(絶対に照れてるってわかってるくせに)
俺はそう思いながらも高科から目を背けさっさと残りのオムライスを食べるのだった。
「じゃあ東口、私もう寝るから。おやすみ。」
「歯は磨いたのか?」
「磨いたって、もう赤ん坊じゃないんだから。」
「本当か、見せろ。」
俺そういうと高科の口を開かせ確認した。
「お前やっぱ磨いてねえじゃねえか、さっき食ったオムライスの卵まだ歯に挟まってるぞ。」
「あが、あが。」
俺は高科が苦しそうにしてるのを見てそっと手を離した。
「な、なにすんだよ乙女の口を開かして中を確認するなんてどこの羞恥プレイだよ。」
「ふん、さっきのお返しだ。しょうもないこと言ってないで早く歯を磨いてこい。」
「はい。」
高科が洗面所に行くと同時に俺はある異変に気が付いた。
(あれ、あいつさっき羞恥プレイとか言ったよな。そんなことを知っている奴が何で最初来た時二人で寝ればいいじゃんなんて言ったんだ。俺は単純に鈍いだけかと思っていたがもしかして。)
そこで俺の一つの憶測が頭の中をよぎる。
(まさかな。)
「はあなんださっきの、東口にしては大胆なことしてきたな。でもまあ、あいつにやられんなら悪い気はしない。」
高科は少し頬を赤く染めながら少し笑顔を浮かべながら言うのだった。
高科が床についた後、俺は風呂に入りに行こうと風呂場に向かった。
「ふう、今日は長い一日だった。泣いたり笑ったり、まず急に人が家に入ってくるんだから、しかも初恋の子が。」
俺は湯船につかりながらそんなことを考えていた。
でもとっさに何か男として興奮せざる負えないものが全身を走るのが分かった。
「ていうかこの湯舟、高科が浸かっていた湯舟だよな。」
内心早く出たいという思いと出たらもったいないという思いが戦っていた。
「い、いやこれは早く出るべきだ。そんな下劣なことを考えては男として、友達として申し訳ない。」
と俺はそそくさと湯舟を出て、水を抜き風呂を洗った。
「はあ、もう早く寝よ今日はもう疲れた、」
俺は眠気に流されるままにすぐに寝てしまった。
ジリリリリ
「ふぁあ、ああ、もう朝か。」
そういってむくっと起き上がろうとすると足のほうに何か異変を感じた、何か重いものが覆いかぶさっている、
「なんでこりゃ。」
俺が布団をバッとめくるとそれは高校時代よく一緒に勉強をしていた幼馴染の杉下みゆだった。
みゆとは中学校では離れてしまったが高校でまた再開し、二人とも同じ東大に受かった。
「うぉお!なんでだ、なんでお前が俺の家にいるんだ。」
「ん、んん?」
みゆはゆっくりと起き上がり
「ああ、哲矢。いやあんたが呼んだんでしょ昨日、同窓会で家に帰らないかもしれないから、宅配便だけ取っといてくれって。」
みゆは俺が唯一心を許している女子で唯一俺のアパートの合いかぎを渡している相手でもある。
「え、ああそうだっけ、だったらお前なんで俺が家に帰った時にいなかったんだ。」
「ああ、あれはバイトが忙しくて予定よりも変えるのが遅くなっちゃったからよ。」
自分が呼んだのに怒ってしまったことをみゆに謝りながら朝食の準備をすることにした。
「で、なんであの子のこと言わないのよ。」
みゆはちょっと怒り気味に俺に聞いてきた。
「え、あの子?」
「あの子よあの子、あんたのベッド寝ていたじゃない。もしかして彼女?私気を使ってあなたと一緒に床で寝る羽目になったんだから。」
俺はすっかり忘れていた更科のことを思い出した。
「あ、あああれは俺の中学校時代の友達だった高科凛ていうやつで分け合って俺の家で暮らすことになったんだ。」
「ふーん。で、彼女じゃないの?」
「違う違う、ただの友達だよ。」
(なんかこいついつもよりぐいぐい来るなあ。)
みゆ白く、かわいいらし小顔をこちらに向けながら聞いてきた。
「じゃあなんでただの友達が一緒に暮らすことになるの?」
「あ、いやそれは、」
俺はあまり高科の許可無しに事情を話すのはよくないと思って言わなかった。
「ちょっとあいつ金がないらしくてよ、だからシェアハウス的な感じでしばらく住まわせてあげているって感じだよ。」
「ふーん、そうなんだまあいいけど。」
(なんでお前が俺の親みたいになってんだよ。)
「まあ確かに、あんたが女性から告白されることなんてそうそうないでしょうからね。」
「うるせえよ。」
そんなことを言い二人で朝ご飯を食べるのだった。
確かにみゆは高校では人気の生徒で男子生徒からは毎日のように告白されていた、まあそれもそう。みゆは父親が俳優で、母親が有名モデル。顔立ちは人一倍整っていたし、その美しい黒髪で男子を虜にしていた。それに誰にでも優しく、男女問わず誰からも愛される存在だった。
「ふああ、あ、東口おはよ、ってえ、誰その美人、もしかして東口の彼女さん?」
「違う違う。こいつはただの幼馴染の杉下ゆみ。今日はほんとは俺の代わりに宅配便を受けっとってもらう予定だったんだ。」
俺はさっきも同じような説明をしたため今回はすらすらと言葉を発せた。
「あ、そうなんだまあ確かに東口に彼女がいるほうがおかしいもんね。」
これもさっき同じことを言われた
「はいはいそうですよ、俺はどうせ晩年彼女できない男ですよ。」
俺はちょっと拗ねながら朝ご飯を片付けだした。
「あ、ごめんごめんそんな東口傷つけるつもりじゃなかったんだ」
高科はちょっと申し訳なさそうに俺に謝ってきた。
するとさっきまで静観していたゆみが急にしゃべりだした。
「ていうかさ、さっきから気になってたんだけどなんで二人ともお互いのこと苗字呼びなの?普通友達なら私みたいに名前呼びじゃない?」
「え、私が東口を名前呼び?まあいいけどじゃあ、哲矢。」
「ほらこのほうがなんか堅苦しい感じがなくていいじゃない。ほら、哲矢も。」
俺は初めて高科に哲矢と呼ばれて嬉しい限りなのに、もうちょっとその感動に浸らせろよなと思っていた。でもいざ自分が言うとなるとなかなか言い出せなかった、
「へ、じゃ、じゃあり、凛」
なんで高科は平気な顔してるんだよ、言うとなるととんでもなく恥ずいじゃねえか。
しかも俺は凛のところだけ小声になってしまったので余計変な風になってしまった。
「おっと、哲矢君なんでそんなに小声なのだい、もしかして恥ずかしいのかい、ほれほれ、恥ずかしいのかい、どうなんだい。」
凛はまるでどっかのおっさんが絡んでくるように言ってきた。
それを見ながら座っていたみゆはくすくす笑っている。
「あ、そういえば言い忘れてたけど私今日からこの隣に住むからよろしくね。」
みゆからの突然の発表に俺は困惑していた。
「隣に住むってそんな急に、なんで。ていうかそしたら昨日なんで俺の家に来たんだよ、もう昨日のうちからお前鍵持っていたはずだろ。」
「さあ、なんででしょう。」
そういうとみゆはそそくさと家を出て行った。
その顔には少しばかり頬の赤らみと、にっこりとした笑顔が見えていた。