1変わってしまった君
ガタンゴトンガタンゴトン電車の音が駅に響き渡る。
俺はその電車に乗り、五年ぶりにかつての中学校の同級生たちとまた会いに行く。
(はあ、もう五年かあいつら今どうなっているんだろうな。)
俺はそんなことを考えながら待ち合わせ場所の居酒屋に行く。
ガラガラガラ
居酒屋に入り、あいつらはどこにいるのかと探す。
「お、哲矢久しぶり。」
「おー芝、久しぶりだなあ。」
俺に最初に声をかけてきたのは中学時代一番仲がよかった芝海斗だった。
「おい哲矢、お前あの東大に受かったんだろ、お前スゲーじゃねえか。誰もまさかお前が東大に受かるなんて思ってもみなかったぞ。」
「そうだよ、お前中学時代は期末も中間も基本のノー勉で毎回赤点すれすれだったし、しかも授業は聞かない、忘れ物はするで有名な問題児だったじゃねえか。」
「うるせえ、あんときは目立ちたかった年ごろなんだよ。」
そういってきたのは中学時代俺とよく一緒にヤンチャをしてよく怒られていた松本隆だった。
(まあ、確かにあの時は俺もあの子にアピールするためよくヤンチャしていたな。でもそれじゃだめだって気づいて一生懸命勉強したんだ。)
「てか、そういえばお前、高科と仲良かったよな。あいつ今どこいるか知らねえか。」
「え、いや知らねえな。てかそもそも仲良くねえし。」
「いやいやお前ら二人してよく先生に怒られてたじゃねえか。」
高科凛、俺の初恋の相手だ。俺もあいつもよく先生に怒られていたが、高科は態度は悪いが頭はよかった。だが俺はただ目立ちたいだけの子供だった。だから高校に入ってからは心を改め、勉強尽くしの日々を送り、見事東大に受かった。
「おお、噂をすれば。久しぶりだなあ凛。」
「え、来たのか。あ、久しぶり…」
彼女は変わっていた。すっかりあの頃の目の輝きやきれいな笑顔は失っていた。
「へえ、なんかお前すっかり変わったなあ。なんかちょっと暗くなったというか、落ち着きが増したというか。」
「え、そう。まあ五年もしたら変わるでしょ。」
彼女は深くフードをかぶりポケットからスマホを取り出した。
「おいおい、せっかくみんなで集まったんだから楽しくあの頃の話でもしようぜ。」
彼女はけだるそうにスマホをしまい少し不貞腐れた顔でフードを外した。
するとさっきまでは見えなかった顔のあざが見えた。
多分みんなそのあざは何だと聞きたかっただろうが会えて聞かなかった。
「なあ、お前大学はどうなんだ。お前頭よかったじゃねえか、名門大に行ってるんだろ。」
(確かに、どこに行ったんだろ。)
隆が聞くと凛は落ち着いた声で
「え、行ってない。今私無職なんだ。」
俺は今聞いた言葉が信じれなかった。
(無職、凛が、あの凛が、そんな馬鹿な。)
「今フリーターでコンビニでバイトしながらネカフェに住んでいる。」
まるで自分が今までやってきたすべてが無意味に化した気がした。
(あれ、でも俺なんで今まであんなに苦労して勉強してきたんだ、別に俺が勉強したからって凛が俺のことを好きになるわけでもないのに。)
俺はなぜかはわからないが目から涙こみあげてきそうなのを感じ、とっさに走って外に出た。
俺はだれにも聞こえないような声で言った。
「なんでだよ、なんで涙が出てくるんだよ。受かってうれしいはずなのに。」