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異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~

異世界美少女エリス<プロットロックの魔法>

田中和也は、変化のない毎日に嫌気が差していた。都内の中小企業で事務職をこなすだけの平凡な生活。上司に叱責され、同僚に軽んじられる日々。趣味の小説執筆も、誰にも読まれることなく埃をかぶる原稿の山と化していた。


そんなある夜、和也は公園のベンチでふと足を止めた。誰かがいた。銀髪の美少女だ。


「面白いものが見たくなってね」と彼女が言った。


「何かの撮影か?」と和也は思った。美少女は和也をじっと見つめた。


「そうね、少しだけ手助けしてあげるわ」と彼女は言うと、小さな鍵を和也に渡した。


「これが『プロットロック』よ。使い方は簡単。この鍵を対象に向けるだけで、彼らの行動が物語のように動き出すわ」


和也は眉をひそめた。「物語のように動き出す? どういう意味だ?」


「そうね、たとえば『ドラマチックな偶然』や『劇的な失敗』を引き起こせるってことね。ただし、結末はその場の流れ次第。いい結果も、悪い結果もね」


半信半疑のまま和也は鍵をポケットにしまい、その夜はそのまま帰宅した。しかし、翌日職場で上司がまた理不尽な叱責をしてきたとき、つい手がポケットの中の鍵に触れた。


「こんなもの、ただの遊び道具だ」と思いつつ、机の陰から上司に向けて鍵をかざしてみた。


すると、驚くべきことが起きた。上司が何かにつまずき、大事な書類をコーヒーに落としてしまったのだ。さらに、その場にいた取引先の担当者が「そんな粗忽な人とは取引できませんね」とつぶやいた。


和也は驚き、内心で笑みを抑えられなかった。


「こんな簡単に使えるなんて!」


その日から和也は『プロットロック』を使い、職場で小さな復讐を重ねた。嫌な同僚が重要なプレゼンで噛み倒したり、先輩が大事な電話を切り忘れて失態を演じたり。鍵の力で、日々のストレスは次第に解消されていった。


だが、和也の欲望は次第にエスカレートした。


「こんな能力があるなら、もっと大きな仕返しをしてやるべきだ」


彼の矛先は、かつて婚約破棄をした元婚約者・美咲に向けられた。美咲は今や裕福な男性と結婚し、幸せそうな生活を送っている。


ある日、和也は偶然を装って美咲の家の前を通りかかった。そして、鍵を使った。彼女の幸せそうな家庭に、何か「劇的な失敗」を引き起こすために。


その瞬間、美咲の夫が玄関で足を滑らせ、大量の買い物袋を落とした。その中から、高価そうな装飾品が散らばり、そのうちの一つが壊れてしまった。美咲が驚いて夫に詰め寄り、口論が始まった。


和也は物陰からその様子を見て、心の中で笑いが止まらなかった。


「ざまぁみろ」


だが、その夜から事態は変わり始めた。


まず、鍵をポケットにしまっておいたはずなのに、和也の目の前に現れるようになった。次に、鍵を使っていないはずなのに、身近な人々の行動が不自然に変わり始めた。職場の同僚が突然和也を褒めそやしたかと思えば、その後トラブルに巻き込まれて退職に追い込まれる。近所のコンビニで気まぐれに買った弁当が、偶然店員のミスで賞味期限切れだったことが発覚する――すべて、彼の意思とは無関係の出来事だった。


和也は不安に駆られ、鍵を手放そうとしたが、捨てても、壊しても、翌朝には再びポケットに戻っていた。


その夜、エリスが再び現れた。


「楽しめた?」彼女は微笑む。


「これ、どうなってるんだ! 捨てても戻ってくるし、誰も幸せにならないじゃないか!」


「最初から言ったでしょう? 結末はその場の流れ次第だって。あなたがそれを悪用したから、物語が暴走し始めたのよ」


エリスは鍵を取り上げた。「おしおきの時間ね」と言うと、鍵を逆さに回した。


その瞬間、和也の頭に激しい痛みが走り、次の瞬間には気を失っていた。


目が覚めたとき、和也は公園のベンチに座っていた。ポケットを探しても、鍵はなかった。周囲はいつも通りの景色だ。


「夢…だったのか?」


だが、ふとした時に周囲で「劇的な出来事」が起きることは、完全に消えていなかった。例えば、彼がただ歩いているだけで見知らぬカップルが喧嘩を始めたり、信号が突然全て青になったりする。


和也は溜息をついた。彼の人生には、もう二度と平凡な日々は戻らないのだと悟った。

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