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episode2 表と裏

夢追い人episode2を開いていただきありがとうございます。episode1は楽しんでいただけたでしょうか。すでにお読みいただいた方はありがとうございます。未読の方は是非episode1からお読みください。

〜夢追い人〜episode2表と裏

「任務の時間だ、パペット」


「了解」


電話を切った俺は家を出て近くのスーパーへ向かう。そこに設置されている証明写真の撮影機に入り、撮影用のカメラをじっと見つめる。2秒ほどで右手の隠し扉が開き奥へ進む。階段を下り地下へ向かう。薄暗く長い地下通路を歩いて10分ほどで目的の扉に到着する。扉を開けると先ほどまでの薄暗い雰囲気とは打って変わって全面が真っ白なタイルで囲まれたハイテク空間が広がっている。正面には巨大なモニター、壁際にはメカメカしい機材の数々、そして中央には立派な管制塔。その管制塔で腕を組み、指揮をとっている男こそが彩霧文也(ふみや)。此処の室長であり俺の父親だ。

此処は【『能力』犯罪特別対策室】。『能力』で溢れるこの島では当然、『能力』を使った犯罪が後を絶たない。もちろんこの島にも警察自体は存在しているが、何せこの島に人が集まり社会ができあがってからまだ20年足らず。『能力』に対する法整備が整い切っておらず、『能力』による暴力を同じく暴力で押さえつけるべきかいまだに結論が出ないでいる。そのため『能力』を封じる方法を編み出すなど警察も奮闘しているが、『能力』を見境なく振るう犯罪者に対して生身の人間では手を焼くばかりという現状だ。そんな現状の解決のために立ち上がったのが公には公表されていない、『能力』を『能力』で押さえ込む行為を専門とする組織、『能力』犯罪特別対策室だ。

俺がそんな極秘情報に詳しい理由は俺が室長の息子であるからではない。俺が此処の戦闘要員、コードネームパペットであるからだ。


「お、来たか、パペット、早速だがこれを見てくれ」


そう言って室長がモニターに映し出したのは、先ほど七奈のスマホで見たものと同じ。崩落した玉交駅だった。


「昨日起こった崩落事故。本来ならただの事故として警察の方で処理すれば何も問題はない。だが、」


「『能力』がらみ、ドラゴンでも映ってた?」


「その通りだ。いつもの情報源か?」


「あぁ。」


雨無の集める情報は案外馬鹿にできない。事件の解決に直接繋がったことだって、これまで何度もある。


「今日の任務はドラゴン討伐?」


「いや、今日はまず玉交駅の調査だ。崩落が起こった瞬間以降、それらしき映像も証言も現れていない。崩落を起こした後、犯人はどこか別の場所で身を潜めている、もしくはそもそも、何者かが遠隔で起こした犯行と考えるのが妥当だ。犯人の正体や『能力』、居場所を割り出すため、調査要員数名で玉交駅へ行ってもらう。お前はその護衛だ。崩落の影響でどんな危険があるかもわからないし、犯人が別の場所でも遠隔でもなく玉交駅内のどこかに身を隠している可能性も捨てきれん。もし何かあった場合、調査要員だけでは身を守れない。頼んだぞ」


「了解。出発は?」


「15分後だ。今のうちに専用服に着替えておいてくれ」


「了解ー」


 俺は更衣室に向かい衣替え始める。戦闘要員の中でも特に活躍の多いメンバーには能力を最大限活用するための機能を詰め込んだ専用服が支給される。それだけ貴重な技術の結晶。俺も半年前ようやく申請が通り、先月出来上がったばかりだ。着替えを終え廊下を歩いていると、大柄で優しい雰囲気を纏った顔馴染みの男性が反対側からやってきた。


松岸(まつぎし)さん!!」


俺は思わず駆け出して松岸さんに抱きついた。大きな体に包まれて安心する。松岸さんは親父と付き合いが長く、俺も昔から世話になっている。正直自分でもかなり松岸さんに懐いている自覚があるが、それほどに優しく、包容力のある人なのだ。


「おー、透ーー!!また大きくなったんじゃないかーー!!」


「松岸さんも、前にもましてパワフルになったんじゃない?」


「そうだなー、何年もかかっちまったけどこっちもようやく整ってきたところだからな!!少しは肩の荷が降りたのかもしれん!!」


松岸さんはこの島の治安を整えるため、政策を立てたり法律を修正したりと言ったことを指揮している立場らしい。いわば松岸さんが表、親父が裏からこの島の平和を支えているのだ。


「俺そろそろ行かなきゃ」


「任務か?」


「うん、今日は調査要員の護衛だけど」


「そうか。だとしても、くれぐれも油断はするなよ。慣れて油断した時こそ危ないんだからな」


「分かってるよ、またね、松岸さん!!」


「おう!!!」


本当は名残惜しかったが、グッと堪えて俺は任務へと向かった。

episode2、表と裏、お読みいただきありがとうございました。雨無と七奈には見せないもう一つの世界。これからどんどん皆様にお見せする世界が広く、広大になっていきます。次回も楽しみに。それではまた夢の世界で。

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