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episode1.夢の蕾

まずはこの物語に興味をもち、開いてくれたことを心より感謝申し上げます。作者の楠来ナイです。

この物語は同じ世界を舞台にした6つの物語のうちの1つ。夢を追い求める者たちの生き様を描いた物語となっています。このお話を読むあなたにも、夢のようなこの世界にどうか没入してほしい。そんな物語を綴っていければと願っております。それでは、また夢の終わりに。

『――――――――君の夢は何かな?』

夢を見ていた。〈俺〉が生まれた、あの日の夢を


キーンコーンカーンコーン――――――――――――


授業の終わりを告げるチャイムが鳴り目を覚ます。

どうやら授業中に眠ってしまったらしい


「起きたかね〜お眠りさん〜?」


先生が教室を出ていってすぐ。俺に話しかけてきたのは同じクラスの雨無聴流(あまなしきる)。間延びした口調に糸目、ニヤついた表情。裏切りそうコンテストがあればぶっちぎりで優勝をかっさらえるだろう。


「今、何か失礼なことを考えなかったかい〜?」


「気のせい気のせい」


「気のせいねぇ〜。まあ、そんなことより、寝てたならどうせ聞いてないでしょ〜?次の能力拡張訓練、体育館に変更だってよ〜」


「まじか、サンキュー」


「どういたしまして〜。さっ、着替えましょかね〜」


女子が出ていくのを確認した雨無はそう言って教室のブラインドを下ろした。


 ――――――――――――――――――


「いいか!今日から訓練は次のステップに移る!そのため改めて復習だ!!『能力』ってのは実際のところ人間が本来持って生まれた潜在的な力が発露したものだ!!だがその深く眠った潜在的なものを引き出す術がなく、奇跡的に条件が揃った事例しかなかったがために、おとぎ話や都市伝説のように扱われてきた!!しかし25年前!ついにその力を人為的に引き出す研究が成功し、今君たちの力になっているわけだ!!

つまりだ!!その力は『能力』と言っても君たちの身体機能の一部に過ぎない!!走り込みや腕立て伏せと同様、使い続けたり、適した使い方をマスターすることで『能力』は更なる真価を発揮する!!

これまでの訓練で自身の『能力』を理解し、向き合うところまでやってきた!!今日からはさらにその先!!『能力』をどう活用できるか、色々と試行錯誤してみよう!!それじゃ!各々訓練開始だ!俺は回りながらアドバイスしていくから何かあったらすぐ声をかけるように!!それと安全には細心の注意を払うんだぞ!!」


イケメン教師六鳩(ろくはと)先生の話が終わると、生徒たちは各々広がり訓練を開始する。

一方俺はというと、一目散に体育館の角を陣取り、雨無と駄弁り始める。別にサボっているわけではない。俺と雨無の『能力』はそれほどスペースを必要としないため、邪魔にならないように端にいるだけだ。だから決してサボっているわけではない。 


「そこのおサボりくんたち」


 背後から肩を叩かれ、ガラスのように澄んだ美声が耳元でそう囁く。さながらASMRである。だが俺はこの声の主を知っている。声の良さを掻き消してしまうほど、中身が残念なこの女の正体を。俺と雨無が振り返ろうとすると、俺たちの頬に指が刺さる。随分と古典的な罠にかかってしまった。犯人はニヤニヤと笑い満足げだ。美声のみならず、萌え袖、ハイライトの無い目、小動物的可愛さを孕んだスタイル。側から見たら完璧美少女とすら思える。だがその実、いたずら好き、天然ボケ、重度のブラコンという三重苦を背負うこの女の名は上原七奈(かみはらなな)。中高一貫のうちの学校に中2で転入してきてからもうすぐ2年の付き合いになる。


「七奈、俺たちは訓練中だ。どこをどう見たらサボってるように見える。」


腕を大袈裟に広げ、俺はそう主張する


「あっ、そうなの?ごめん勘違いだった?」


七奈はその天然ボケを遺憾なく発揮し、俺の出鱈目を易々と信じ切った。


「馬鹿だね〜、鞄から人形を出してすらない奴が訓練中なわけないでしょー?」


「え?あっ!ほんとだ!私また騙された!?」


「何をおっしゃる、俺の《人形師》は更なる進化を遂げ、俺の手を離れてひとりでに人形を動かしているのだよ」


「そうなの!?いつの間にそんな成長を...すごいね!!」


人を疑うことを知らない女は心の底からの称賛を抱きこちらを見つめてくる。ハイライトの無い目がなぜか輝いて見えた。

ちょうどいいので自己紹介がてら説明しておこう。俺の『能力』は《人形師》(自分で名付け気に入っている)。俺が人形として認識したものを同時に2つまで人形師のように自由に操れるだけの能力、ということになっている。それが俺、彩霧透(あやぎりとおる)の『能力』だ。


「はいはい〜、そこまでそこまで〜。透嘘つきすぎ〜、七奈信じすぎ〜。おどれの手を離れても動いてんならそれはもうポルターガイストだよ〜」


「ははっ、そりゃそうだ。悪い悪い。今日の訓練、七奈のクラスも合同だったんだな。」


「うん、そうだよー、ほら!訓練訓練!それじゃ!また放課後にねー!!」


七奈は俺たちの背中を力強く叩き、手を振りながら六鳩先生のところへと歩いていった。七奈のことだ、俺たちの背中に何かを貼ったに違いない。俺は慣れた手つきで背中に貼られた紙を外し、中身を読むことなくくしゃくしゃにして近くのゴミ箱に放り投げた。雨無は中身を読んだようだが、俺よりも力強く紙を潰して放り捨てた。それほどのひどいことが書かれていたんだろうか。


――――――――――――――――――――――――――


放課後になり、俺と雨無そして七奈の3人は並んで道を歩いていた。向かう先は俺たちの学生寮。『能力』を求め外部から多くの生徒がやってくるこの島の学校には原則として寮の完備が義務付けられている。言い忘れていたが、ここは日本から少し離れた場所に位置する突氷島(とっぴょうじま)。『能力』の開発や研究、使用はこの島内でのみ許されている。この島についての説明は、まぁいずれするとしよう。

 

「それじゃ〜今日のお話いっちゃいますかね〜」


学校から寮まで徒歩約8分、その時間、雨無が『能力』で集めた噂話を聞くのが俺たちの日課となっていた。雨無の『能力』はイヤーコントロール(これも俺が名付けた)。身の回りの音の振動を調整して遠くの音を聞いたり、逆に音を遮断したりできるらしい。

「次のうちから選んでね〜

 1.寮にへばりつくオオトカゲの影

 2.暗闇を一瞬で走り去るかまいたち

 3.玉交(ぎょっこう)駅陥落の犯人はドラゴン

 4突如現れた巨大流星群

 さてさて〜どれにする〜?」


「玉交駅って確か隣町の地下鉄駅だよな?」


「うん、昨日大きな崩落事故があったってニュースになってたよ、ほら。」


七奈はスマホでニュースを調べ写真を表示した。かなり広範囲にわたって崩落が起きたようだ。瓦礫が山積みになり、コンクリで固めたであろう地層が剥き出しになっている。記事には柱の老朽化が原因と思われると書いてあるが、これだけの範囲の柱が一斉に全て壊れるものだろうか


「この崩落の犯人がドラゴンってどういうことだよ」


「目撃情報さ〜。昨日は日曜日だったろ〜?そして玉交駅の辺りにはデパートや遊べる施設が多くある。ウチの生徒で昨日あの辺りに行った人も結構いたみたいでね〜」


「あたしのクラスにもいたよ。駅が使えなくなったせいで歩いて帰るハメになったって愚痴ってた。」


「そしてこの崩落についての話で気になったのが4つ〜。そのどれもが崩落した場所で巨大な尻尾や爪らしきものを見たって話なんだよね〜。まさにドラゴン〜!1人2人ならまだ見間違いの線もあるけど〜、4人となると話は変わってくるよね〜。」


「巨大な尻尾に爪...龍化の『能力』とかか?」


「普通に考えたらそうなんだけどね〜。気になるのが、4人の情報を聞く限り、完全なドラゴンというより、博物館でよくある恐竜の骨格標本みたいなイメージなんだよね〜。」


「肉のついてない骨だったってことか?なら俺と同じように何かを操る『能力』でドラゴンみたいな何かを操ってたとか?」


「透、自首しなさい」


「断じて俺じゃねぇ!!」


「そうだね〜、龍化ってよりかは透の考えの方が違和感はないかな〜。っと、寮に着いちまったね〜。今日の話はここまで〜。」


雨無が話を切り上げ、俺と雨無は階段に、七奈はエレベーターに向かった。5階建てのこの棟は1階が共同スペース、2.3階か男子部屋、4.5階が女子部屋となっている。俺の部屋は211号室。ちなみに隣の212号室の住人はまさかの雨無である。

俺が自分の部屋に辿り着き、着替えを終え、ベッドに横たわって一息ついていると、スマホに着信が入った。相手の名前を確認した俺は起き上がり電話に出る。電話先の男はこう言った。


「任務の時間だ、パペット」

             to be continued…………

最後までお読みいただきありがとうございます。

少しはこの世界に興味を抱いていただけたでしょうか。

更新は不定期になりますし、他の5つの物語も並列して書いていこうと考えております。次は誰の世界で皆様とお会いできるのでしょうか。またお読みいただける日を楽しみにしております。

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