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5.第二回脳内会議 〜デート計画編〜


 リリーとデートの約束をした日の放課後、私は帰って早々自室に籠もり、再び脳内会議を開いた。


(さて、リリーとのデートに向けて、これから完璧なデートプランを練ろうと思います)


 しかつめらしい声で脳内に話しかけると、フィリップも真面目な声で返してきた。


(わかった。僕は何をすればいい?)

(まず、リリーの好きなものを教えてください)

(………………)

「まさかわからないの!? 何年婚約者やってんのよ!!」


 無言のフィリップに、私は思わず声を上げてしまった。開始早々、幸先が悪すぎる。

 一方、責められたフィリップは、しおしおとした声で言葉を紡いだ。


(すまない、その……昔からリリーを避けることが多くて……努力家で秀才という以外、彼女のことをあまりよく知らないんだ……)


 確か二人は幼少期には婚約を結んでいたはずだ。十年以上もリリーの婚約者をやってるのに、なんとまあ情けない。


(……前々から気になってたんだけど、あんたってリリーのこと嫌いなの?)

(決して嫌いではない! 嫌いではない、のだが……完璧すぎて隣にいてつらいと言うか……居た堪れなくなると言うか……) 

 

 これが男のプライドというやつか。そんなつまらないもの捨てちまえとも思うが、出来のいい弟と優秀な婚約者に囲まれた第一王子に向けられる視線というのが、あまり良いものでないことは容易に想像ができた。それでリリーを避けて良い理由にはならないが、彼も彼でつらい時期を過ごしたのだろう。


 私は半ば励ますようにフィリップに声をかけた。


(嫌いじゃないならいいわ。リリーのことをよく知らないなら、これから知っていけばいいだけよ)

(努力します……)


 フィリップは項垂れているのが目に浮かぶような声でそう言った後、はたと気づいたように尋ねてくる。


(でも、好みがわからないのに、どうやってデートプランを作るんだ?)

(それはあれよ。クラスの女子にリサーチするのよ!)


 私は意気揚々と拳を握り、クラスメイトのご令嬢たちに何から聞こうかと考えるのだった。



***

 

 

 次の日、私は早速クラスメイトにリリーのことを尋ねることにした。教室の隅で固まって話していた女子たちに声をかける。


「君たち、少し良いかな? リリーとデートするに当たって、彼女の好きなものを教えてもらいたいんだが……」


 私がそう言った途端、女子たちが呆れと不快に満ちた目でこちらを見てきた。


「幼少期からの婚約者なのに、ご存知ありませんの?」

「最近少しは見直したと思ったのに、ガッカリですわ」

「リリー様が本当にお可哀想……あのまま婚約破棄なさった方が良かったのではなくて?」


 ご令嬢たちから矢継ぎ早に辛辣な非難の声を浴びせられたが、私は心の中でうんうんと首を縦に大きく振り、彼女たちに激しく同意した。


(どうですか、王子? これが女の子の普通の反応ですよ?)

(情けない限りだ……)


 反省してくれたなら何よりだ。この王子には、少しずつでも乙女心というものを知ってもらわなければ。


 才色兼備のリリーは女子生徒からの人気も高く、逆にリリーを蔑ろにしていたフィリップを目の敵にしているところがあった。このままでは助言が得られそうになかったので、私はフィリップに協力したくなるような言葉をご令嬢たちにかけた。


「すまない、皆。だが僕は、今までのことを少しでも償いたいんだ。デートでは彼女に少しでも喜んでもらいたい。だから、少しだけ力を貸してもらえないだろうか」


 しおらしくお願いするフィリップを見て、ご令嬢たちは満足したようにそれぞれ声を上げた。


「まあ! 素敵な心がけですわ」

「そういうことなら、協力して差し上げてもよろしくてよ?」

「リリー様が喜ばれる顔が見てみたいですわ」


 こうしてクラスメイトからリリーの好みについて情報収集できた私は、ついでにおすすめの店なども紹介してもらった。


(楽しい……どうして私は女の子に転生出来なかったんだ……)


 まともに高校生活を送れなかった私にとって、クラスの女子達と可愛いカフェや最近できた雑貨店の話をするのは最高に楽しいことだった。


 楽しくて思わず脳内で呟いていた私に、フィリップの怪訝そうな声が聞こえてくる。


(この会話のどこが楽しいのか、さっぱりわからん)

(それ、リリーの前で絶対言っちゃだめだからね。というか、振り向いてほしいなら相手の好きなものに興味を持って、相手を楽しませる努力をしなさい)

(はい、すみません……)


 全くこの王子にも困ったものだ。勉強以外に恋愛についても教えないといけないのか。


 私は脳内フィリップが黙り込んだのを良いことに、ご令嬢たちと最新ファッションについての話題でしばらく盛り上がっていた。



***

 

 

 それからデート当日までの間、私は空き時間があればデートで使う店の下見をしたり、デートプランを練ったりと忙しく過ごしていた。


(当日は基本的に私に任せて! 完璧なエスコートでリリーを惚れさせてみせるわ!)


 完璧なデートプランを完成させた私は、意気揚々とフィリップにそう言った後、ふと気になったことを口にした。


(というか、今までのデートではどんなところに行ってたのよ?)

(…………今まで、デートはしたことがない……)

(え、リリーと一度も? 幼少期から婚約者だったのに??)

(ああ……)


 フィリップの回答に、私は開いた口が塞がらなかった。それは愛想を尽かされても文句は言えない。


(……つまり初デートってことね。これは責任重大だわ。任せて、最高の初デートにしてみせるわ)

(頼もしい限りだ……)


 私は失敗できないミッションに緊張を覚えつつ、デート当日を迎えたのだった。



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