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第9話 アンデッド騎士


 あれから俺は、来る日も来る日も土を堀った。


 村の西側面はすべて堀によって森から隔たるよう、長く掘らなくちゃいけないからな。


 こうして10日後。


 川向こうの『堀』は一応の完成をみる。


「すごいです! 神さま!」


 巫女のナルメが俺を見上げて、感激にお尻をツーンとさせた。


 無理もない。


 この堀は空堀ではあるものの一工夫がされている。



【堀・横断面図】

※■=土



 森     ■■   村

       ■■

□□□□   □□□□□□□

   □ 堀 □

   □□□□□



 このように。


 ただ穴を掘るだけでなく、掘った土を村側に盛り、水気で堅く固めて、壁のようにしつらえたのだ。


 森からやってくる魔物は、堀の底から、土壁の上までよじ登らなければ村へ到達できない。


「ふふふ。これならよっぽどデカい魔物じゃない限り、簡単にはよじ登ってこれないだろう」


「はい!」


 さらに考えたのは、堀をよじ登ろうとする魔物を攻撃するのには剣よりも弓矢や槍の方がよいだろうということである。


 そこで石工のカイムには『石の槍』を3本作ってもらうことにした。


 ところで、何故『3本』かと言うと、次の襲撃に備えて狩人を3人置いたからである。


 そう。


 最初、天職はひとつにつき1人しか与えられないと早合点していたのだけれど、天使が言うには別に制限はないらしい。


 だったら何人でも狩人にすれば簡単に村を守れそうとも思ったが、役割にはバランスというものがある。


 村人は36人。


 それで5人も10人も狩人にしては、村が回らなくなくなる。


 武器を作れる石工も1人だし、狩人も今は3人でギリギリだろう。


 で、アンデッド騎士襲撃の当日。


 カイムは槍3本を見事に仕上げてくれた。


 そして、狩人にそれを一本ずつ装備させ、堀の上に立たせるのだ。


「あ! 来たぞ!」


「ガイコツだ!」


 土壁の上で槍を持った狩人たちが、森の方からやってくる7匹のモンスターを指さす。


 魔物はガイコツに鎧をまとったアンデッドだ。


 イー! イー!


 ガイコツたちはぼう戦闘員のような声をあげて、こちらへ飛びかかって来た。


 しかし、そこには堀がある。


 イー!……イイッ!?


 ヤツらは堀に落下すると骨をバラバラにした。


 一瞬すげーもろいヤツらなのかと思ったが、散らばった骨がカキコキと集まり復活してしまったではないか。


 そして、なんとか堀を超えて村を襲おうと、よじ登って来るのだ。


「今だ! 突け!」


 そこで俺は号令した。


 狩人たちは堀をよじ登って来るガイコツを槍で突く。


「おー!」


「らああ!」


「せいやあ!」


 土壁の上から突き下ろす狩人たちの槍が、ガイコツらの行く手をはばむ。


 敵は攻撃できず、槍をくらい、また骨をバラバラにしては復活してよじ登ってくる。


「ひえー、これじゃキリがねえべ」


 ただし、ガイコツも復活するたびにどこかの骨が一ヶ所ずつ欠けていっていた。


「よく見ろ。ヤツらも不死身じゃない。それより堀を上がりきられないように7匹まんべんなく突け!」


 そう言って狩人たちに槍を突かせると、敵は一匹減り、二匹減っていく。


 その間、こちらにダメージを受けた者はない。


 敵は堀をよじ登っているばかりで、味方はこれを上から槍で突いているだけだからな。


 このままいけば順調に倒しきれるだろう。


 そう思ったのだが……


「か、神さま! 槍が!」


 そう。


 石の槍が壊れてしまったのである。


「神さま、オレのも!」


 こうして、二本目、三本目も壊れてしまう。


 敵はまだ2匹残っていて、このガイコツたちは堀をよじ登りきってしまった。


「……ひい」


「か、神さま……」


「しょうがねえな」


 俺は怯える狩人を背後に守り、最後に残った石の剣を構えた。


 イー! イー!


「うるああ!」


 俺がこれを一つ斬り、二つ斬り、三つ斬りとすれば1匹倒すことができたが、しかしこれで石の剣も壊れてしまう。


 しょうがないので残り1匹は拳で倒したが、武器に課題の残る戦いだったな。


「面目ねえ……」


 とカイムは言うが、これは彼のせいじゃないんじゃねーか?


 石でよくここまでの武器を作ってくれていると思うし。


 やっぱり金属がほしいな……



 ◇



 金属の鉱石を掘るため、カイムに『石のつるはし』を作ってもらう。


 形状的にかなり難しそうだったけど、10日ほどで仕上げてくれた。


「というわけで、明日からちょっと探索に出かけてくるよ」


 その日の晩。


 ほこらでで眠る時、巫女のナルメにそう告げる。


「もしかしたら何日か村を空けるかもしれない」


「そうですか……」


 と、沈んだ声のナルメ。


「心配すんな。占い師の情報では、しばらくたいしたモンスターは攻めてこないよ」


「いえ、そうではなくて……」


 巫女の少女は訴えるような目で、俺の衣をちょこんと握りながら言った。


「……私、早く神さまの赤ちゃんを産みたいんです」


「えっ」


 あまりに素直な言葉に俺はちょっと面食らう。


「やれやれ、わかったよ。お前のためになるべく早く帰ってくる」


「はい!」


 俺は彼女を抱き締め、お互いのほおを重ねてみる。


 少女はその健康的なほおを俺のほおこすりつけて信仰心を示した。


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